ファクトで見ると日本企業は付加価値を稼げなくても、人件費や仕入れを抑制し、利益を稼ぎ、純資産を増やしています。これは、大企業だけでなく、中小零細企業でも同じような状況です。ただ、大企業と中小零細企業には稼ぐ力などに格差があるようです。1人当たりの指標に直すことで、その格差を可視化してみましょう。
図8は従業員1人当たりの1年間に稼ぐ付加価値を表したものになります。企業規模ごとの労働者の生産性と呼べるものですね。オレンジ色(右軸)が大企業と中小零細企業との格差を表します。
直近では、大企業で1400万円、中小零細企業で550万円ほどとなります。平均値で約720万円です。中小零細企業の1人当たり付加価値は1990年ごろにピークとなり、減少後停滞しています。一方で、大企業では、多少の上下はありながらも増加傾向です。大企業と中小零細企業には2.5倍もの生産性の格差があることになります。
日本の労働者の平均労働時間は直近で約1680時間(OECD統計データより)です。この平均労働時間で、1人当たりの付加価値を割ると、1時間当たりに稼ぐ付加価値である労働生産性を推定できます。
2018年の数値で換算すると、中小零細企業で1時間当たり3243円、大企業で1時間当たり8232円、日本企業平均では1時間当たり4346円となっています。OECDの労働生産性の平均値が1時間当たり5400円相当で、同じ工業国のドイツでは1時間当たり6700円相当(1ドル105円換算)ですので、いかに日本の中小零細企業の労働生産性が低いかが分かりますね。
図9は企業規模ごとの従業員の平均収入となります。
直近では大企業で580万円、中小零細企業で300万円ほどとなります。平均値では約370万円です。大企業と中小零細企業には約2倍の収入格差があることになります。OECDの平均給与の平均値が446万円相当、ドイツの平均給与が512万円相当ですので、やはり中小零細企業の水準はかなり低いといえます。
このように、大企業と中小零細企業では、労働者1人当たりの指標では大きな格差が生じていることは事実です。さらに、中小零細企業の水準は先進国の中でも極めて低い水準にあるということが分かります。「中小企業は生産性が低い」といわれるのも、この数値を見れば納得せざるを得ません。
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