それでは、日本企業における中小企業の実態について、もう少し詳細を見ていきましょう。前回と同様に「法人企業統計調査」から中小零細企業、中堅企業、大企業の企業規模ごとに統計データ(ファクト)を可視化していきます。
本稿では、厳密な定義とは異なりますが、資本金1億円未満を中小零細企業、1億円以上10億円未満を中堅企業、10億円以上を大企業として扱います。
それでは、企業の活動の中で、中小零細企業の占める度合いを確認していきましょう。企業の数でいえば中小零細企業は全体の企業数の99%以上を占める圧倒的多数派です。それでは、企業で働く労働者の人数ではどうでしょうか。
図3に企業規模別の従業員数(年間平均値)を示します。黄色いラインが、その中で中小零細企業の占めるシェア(右軸)を表します。
ファクトを見てみると意外ですが、日本の企業に勤める労働者は、実は右肩上がりで増え続けています。少子高齢化により生産年齢人口は減りつつありますが、高齢の労働者や女性の労働者が増えているためです。
日本経済のピークだった1997年では3700万人程度でしたが、直近では4300万人程度まで増えており、2割近くは増加していることになります。ただし、前回確認した通り、人件費の総額は横ばいなので、1人当たりの所得が減少し、労働者全体で「ワークシェアリング」をしているような状況が続いています。
この中で、中小零細企業に勤める労働者は、増加傾向が続いていて直近で2900万人程度と、全体の7割近くを占めます。一方で、大企業の労働者数は停滞気味です。企業に勤める労働者の内、7割もの大多数が中小零細企業で働いているということは重要な事実だと考えます。中小零細企業の労働者の方が、多数派であるということですね。
それでは、仕事の価値である「付加価値」と、労働者にとっての対価となる「収入」についてはどうでしょうか。図4に企業規模別の付加価値(GDP)、図5に従業員の収入のグラフを示します。従業員の収入は給与と賞与の合算値としています。
中小零細企業は、付加価値も従業員の収入も1995年当たりから停滞しています。大企業の付加価値はアップダウンがありながらも増加傾向で、従業員の収入はややマイナス気味で横ばいです。
直近では企業の稼ぎ出す付加価値320兆円の中で約50%の160兆円ほどが中小零細企業によるものです。そして、企業から支払われる従業員の収入160兆円の内、約52%の85兆円ほどが中小零細企業によるものとなります。従業員が70%程度に対して、付加価値も従業員の収入も随分と目減りしているようです。
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