さらに企業の経常利益についても見ていきましょう。図6は経常利益のグラフです。
日本企業の経常利益の合計は、バブルであった1990年周辺で極大化しますが、その後減少し、再度1990年代中頃から上昇基調となります。最近ではどの企業規模でも過去最大の経常利益となっていますが、特に大企業の増加が大きいのが見て取れます。一方で中小零細企業のシェアは年々減少していき、直近では30%を切る程度まで落ち込んでいます。
このように付加価値や経常利益などのフロー面では、明らかに大企業に比べて中小零細企業が弱まっているという状況が見えます。付加価値を「稼ぐ力」や、利益を「もうける力」が弱いということです。ただし、あまりもうからないイメージの中小零細企業でも、直近では実は経常利益は過去最高の水準に達していることは意外な事実なのではないでしょうか。
ここまで確認してきた通り、現在のところ日本の企業は、大企業も中小零細企業も、稼ぎ出す付加価値が停滞していても、利益を出せるように変質しています。そして、図7に示すようにストック面では、純資産が大企業だけでなく中小零細企業でも右肩上がりで増大している状況です。
このグラフをよく見ると、くしくも日本の経済絶頂期である1997年から急激に純資産が増大し始めています。1997年はGDPの停滞が本格化し、平均給与が下がり始めるターニングポイントでしたね。実はこのタイミングから企業の資産が急激に増大を始め、一方で労働者の貧困化が進み、本格的な経済停滞が始まっているわけです。
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