「アフォーダンスライティング」では、具体的には、照明の光に動きや明暗、色などの変化を加えることで、空間のにぎわい感を演出しながら、人の心理や行動に働き掛けるというものだ。これまでの照明のように一定の明るさで照らし続けるのではなく、動的な光で「回遊」や「滞留」などの演出を行う。実際の演出照明手法は人が心地よく感じつつ行動に働き掛けられる演出をデザイン思考で着想し、実験を重ねることで、光の変化パターンと人がそれをどう感じるのかを検証しながら開発してきた。
同社が行った実験では、人の歩行速度に合わせて進行方向に光が流れる「回遊」の演出において「光の動く方向に歩きたい」「楽しい」「興味がある」などの項目が一般的な屋外照明と比較して高く評価されたという。また、ゆったりと明るくなる、暗くなる、を繰り返す「滞留」の演出では、「飽きない」「とどまりたい」「心地よい」などの項目が高く評価され、それぞれの演出が狙う効果についての優位性を確認した。
パナソニック エレクトリックワークス社 技術本部 デザインセンター ライティングデザイン部 部長の須藤和哉氏は「今回は炎の明かりのような、心に働き掛ける動的な光に着目した。これまでの明るく照らす光から、光により行動を誘う新しい光の意味を作ることを目指している。こうした効果を生み出すため、光のコンテンツを新たにデザインすることに取り組んでいる」と語っている。
光のコンテンツ開発は、まずフィールドリサーチを徹底的に行い、仮説を提起する。それに対し景観設計などの専門家にヒアリングして実際に検証するという流れで行っている。人の屋外での行動としては、大きく分けると「とどまる」「移動する」の2つがある。この2つの行動を起点に必要な明かりを検討し「アイデア出し」「プロトタイプの作成」「有効性検証」のサイクルを回す。
滞留の明かりは、音楽(BGM)とも併せてそこにいたくなるような心理的効果があった。回遊の明かりは心地よく、楽しく歩き回れるような光となっている。今後は、任意の方向への訪問を働き掛ける「誘導」などの新たな演出コンテンツの開発も継続して進めており、さまざまな目的に合わせて活用できるよう順次展開していく予定だ。また、アフォーダンスライティングは、スポットライト(屋外で使われている照明、色温度3000K、電球色を中心)とともに、間接照明での検証も行い、効果的に見せる手法を多様にしていてくことも考えている。導入後には、その街のニーズに応えてアップデートしていく計画だ。
なお、「アフォーダンスライティング」の効果検証をさらに進めるため、世界遺産である元離宮二条城(京都市)で2021年11月5日から実施されるライトアップイベント「ワントゥーテン 二条城夜会(主催、ワントゥーテン、京都市)」に同照明演出を試験導入し、公の場での効果検証を実施する。
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