ニュース
» 2021年06月23日 11時30分 公開

深紫外ピコ秒レーザー加工装置、半導体パッケージやガラスの高速微細加工を実現金属加工技術(2/2 ページ)

[三島一孝,MONOist]
前のページへ 1|2       

熱ひずみにどう対応するか

 試作を実現した「高出力深紫外ピコ秒レーザー加工装置」の技術的なポイントは主に深紫外レーザーを発生する「深紫外レーザー光源」部分と、この光源を最適に加工対象物に当てて制御する「加工光学系」部分に分けられる。さらに深紫外レーザー光源は、高出力の近赤外レーザー光源(1064nm)を波長変換ユニットで深紫外レーザー(266nm)に変換する仕組みであり、これを実現する「基本波レーザー光源」と「波長変換ユニット」が技術的なポイントとなっている。

 ただ、高出力化するとどうしても各部で熱ひずみが発生し、これらに対応する必要があった。また、従来のピコ秒レーザーでは、パルスの制御性が低く、加工の障害となっていた。今回の協業はこれらの課題を解決したものとなる。

photo 開発の課題(クリックで拡大)出典:三菱電機

 基本波レーザー光源については、スペクトロニクスが開発した半導体レーザーを種光源とする100W級の短パルスレーザーを基にし、レーザー結晶内の熱によるひずみの分布を考慮してレーザー結晶の配置を工夫することでレーザービームのひずみを抑制し、三菱電機が開発した200W以上の増幅器を使って出力を増幅させた。波長変換ユニットについては、高出力の深紫外レーザーを長期間安定に発生できる大型波長変換素子を切り出せるような大型の深紫外レーザー発生用結晶の製造技術を、大阪大学レーザー科学研究所が中心となり開発。内部欠陥の少ない世界最大級(重量1.5kg)の超大型結晶を製造する育成技術により、高出力に対応する深紫外レーザー発生用結晶を実現した。

 また、基本波レーザー光源については、電気信号によって直接半導体レーザーからピコ秒レーザーパルスを任意のタイミングで発生させるゲインスイッチパルスを利用する方法を採用。ただ、微弱な半導体レーザーのゲインスイッチパルスには、光増幅する際に発生する光ノイズに埋もれてしまう問題があった。これを解決するため、スペクトロニクスでは、ノイズが少なく増幅率の高いファイバー増幅器とバルク増幅器とを組み合わせたハイブリッドMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)方式によるピコ秒パルスの基本波レーザー光源を開発し、課題を解決したという。

photo 深紫外レーザー光源の仕組み(クリックで拡大)出典:三菱電機

 加工光学系については、従来のレーザー加工装置で使っていた透過型光学系ではなく、ミラーを使った反射型光学系を開発した。発熱が表面だけに限定されるミラーを用いることで熱によるひずみを低減するとともに、非軸対称な2つのミラーを組み合わせることで、レーザービームのひずみを透過型光学系の15分の1に低減させた。集光性の低下を抑制することで、高出力化してもビームサイズの調整ができるようにした他、加工点でのビーム形状を真円で小さくすることができ、直径が最小4μmの微細穴をガラス基板に形成する精密加工などができるようになったという。

photo 加工光学系の仕組み(クリックで拡大)出典:三菱電機

半導体パッケージ用やガラス基板用などで展開

 今回開発した試作機は、東京大学を中心に設立した「TACMIコンソーシアム」が千葉県柏市に構築したレーザー加工プラットフォームに、2021年7月に設置する予定。今後は三菱電機内での製品化に向けた検討を進める他、TACMIコンソーシアムなどの環境も生かしながら、レーザー加工装置を使用する電子部品や半導体関連企業と連携し、ガラスなどへの精密で高速な加工技術の開発、新規用途の開拓を進めていく。

 三菱電機 先端技術総合研究所 駆動制御システム技術部長 高橋宣行氏は「メインで想定している用途は、半導体パッケージ基板や半透明受信の微細加工だが、それ以外でも医療分野でのガラス系部材などもターゲットとなる」と用途展開について語っている。

photo 微細穴あけ、溝堀りの加工例(クリックで拡大)出典:三菱電機

≫「金属加工技術」のバックナンバー

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.