Vuforia Instructは、AR作業手順書を作成/編集するための「Vuforia Editor」、完成したAR作業手順書にアクセスして実際に現場で点検/検査業務を行うための「Vuforia Vantage」、作業状況の確認や分析が行える「Vuforia Insights」の3つのソフトウェアモジュールで構成されている。Vuforia EditorとVuforia InsightsについてはSaaS型のアプリケーションとしてAtlasプラットフォームで提供され、Vuforia Vantageは現場での点検/検査業務に使用するiOS/Android搭載デバイス上に専用アプリをインストールして利用する。
Vuforia Editorは、AR作業手順書の作成権限を保有するユーザーが、Webブラウザからアクセスして利用できる。点検/検査作業の各ステップに対して、文字による作業内容の説明、写真や動画による確認内容の支援、3D CADデータによる確認部位の指定などを利用して手順を作成していく。また、必要に応じて作業者に対してどのようなアクション(合否判定の入力など)を求めるかなどを設定できる。完成したAR作業手順書は権限が与えられたユーザーにのみ公開される。公開前にプレビュー機能で内容を確認したり、Word形式でファイル出力することも可能だ。なお、Vuforia Editorに取り込める3D CADデータは、現在ビュワー形式の「PVZ」のみとなるが、今後対応フォーマットを拡充していく計画だという。
実際に点検/検査を行う作業者は、Vuforia Vantageがインストールされたタブレット端末を用いて作業を実施する。Vuforia Vantageにログインすると許可されたAR作業手順書が表示される。実際の作業内容と作業対象とのひも付けは製品のシリアルナンバーなどを入力することで行う。作業内容を選択すると、AR空間上にライブガイドが表示されるので、それを実際の検査対象と重ね合わせることで作業がスタートする。ナビゲーション表示によって確認ポイントへ作業者を正確に誘導したり、着目すべき部位に対してマーカーを表示したりすることで、的確な作業指示を行う。各作業に対して合否を入力し、全ての作業が完了したら送信ボタンで作業結果を提出する。
Vuforia Vantageで実施した検査結果は、Vuforia Insightsで確認することが可能だ。こちらも権限を持つユーザーがWebブラウザからアクセスできる。画面には、実施日、完了日、所要時間、各ステップのフィードバック内容などが表示され、傾向を読み取ったり、問題のある作業内容を特定したりなど、改善活動につなげられる。また、検査結果をCSV出力して、他の業務システムなどに取り込んで活用することも可能だ。
実は、Vuforia Instructを構成するこれら3つのソフトウェアモジュールは、保守点検作業などをAR技術で支援する製品「Vuforia Expert Capture」でも共通利用しているという。「最大の違いは、Vuforia Expert Captureが現場を録画したキャプチャーデータを利用するのに対して、Vuforia Instructは設計が保有する3D CADデータを使うという点だ。また、非常に単純な作業指示だけであればどちらの製品でも目的を達成できるが、検査業務に不可欠な合否判定などの作業結果のフィードバック機能に関しては、Vuforia Instructのみの提供となっている」(山田氏)。
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