PTCジャパンは、工場などの現場における熟練作業者の作業内容をARデバイスで直接キャプチャーし、トレーニング用のデータとして活用できるARソリューション「Vuforia Expert Capture」を発表した。
PTCジャパンは2019年4月8日、東京都内で会見を開き、工場などの現場における熟練作業者の作業内容をAR(拡張現実)デバイスで直接キャプチャーし、トレーニング用のデータとして活用できるARソリューション「Vuforia Expert Capture(以下、Expert Capture)」について説明した。同社のARプラットフォーム「Vuforia」ブランドの製品となるが、単独のソリューションとして同年5月9日に発売する予定。正式な価格は未定だが、「アーリーアダプター向けには、200ユーザーで15万米ドルで提供している」(米国PTC Vuforia担当 シニアディレクターのマット・シェリダン(Matt Sheridan)氏)という。
Expert Captureは、PTCが買収したMIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボのスピンアウトベンチャー・Waypoint Labsの技術を製品化したものだ。2018年6月開催の年次テクノロジーカンファレンス「LiveWorx 2018」でも披露している※)。
※)関連記事:熟練技術者の作業をHoloLensでキャプチャー、30分でARトレーニングデータが完成
シェリダン氏は、製造業をはじめとするさまざまな現場の課題として、熟練作業者の知識やノウハウといった技能の伝承を挙げた。「世界の製造業全体で1000万人もの人手が不足しているといわれている上に、熟練作業者はどんどんリタイアしている。その一方で、紙のマニュアルを基にした技能伝承は効率的とはいえず何年も時間がかかる。それどころか、熟練作業者の知識やノウハウはその頭の中にあるだけで文書化されていないことも多い」(同氏)。
この課題を解決できるとするのがExpert Captureだ。ARデバイスの「RealWear HMT-1」やマイクロソフトの「HoloLens」を熟練作業者が装着して作業内容を記録する「Vuforia Capture」、記録した作業内容を編集する「Vuforia Editor」、編集済みの作業内容をARデバイスで再生しながら新人作業者へのトレーニングなどを行う「Vuforia View」という3つのプロセスから成る。
Vuforia Captureでは、ハンズフリーが可能な音声で(HoloLensの場合はジェスチャーも利用できる)操作して作業内容を記録していく。記録した作業内容を編集するVuforia Editorの画面は「とても使い方が簡単なので、短時間で編集作業を終えられる」(シェリダン氏)という。そして、Vuforia Viewも音声で操作できるので、ARデバイスに表示される指示を確認しながら両手を使って作業に集中できる。なお、Vuforia Viewについては、スマートフォンやタブレット端末を利用することも可能だ。
Expert Captureの先行ユーザーの1社が、半導体ウエハーのファウンドリーであるGLOBALFOUNDRIESだ。同社によれば、教育訓練時間を半減したり、標準作業書作成のスピードを10倍にしたりといった効果が得られたという。
会見では、PTCジャパン 製品技術事業部 執行役員 副社長の成田裕次氏によるExpert Captureのデモも実施。RealWear HMT-1に組み込んだExpert Captureのアプリを使って、日本語による音声操作が可能なことを示した。成田氏は「Waypoint Labs買収の時点で国内顧客に紹介してきた技術だが、製品化を待たず多くの引き合いをいただいていた。工場などの現場に、AI(人工知能)やロボットが入っても人がやるべき作業は多い。その技術伝承をどう行うかというときに、その作業内容全てキャプチャーしてデータとして蓄えるExpert Captureは有効なソリューションになるだろう」と述べている。
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