PTCはバーチャルライブイベント「LiveWorx 20 Virtual」で、同社のSaaS型ソリューションの特徴や最新事例について語った。また、特にリモートワークに役立つARソリューションおよび、その開発環境についても紹介した。
米PTCは2020年6月9日(現地時間)に、同社初となるバーチャルライブイベント「LiveWorx 20 Virtual」を開催した。その中で、同社のEVPでSaaS(Software as a Service)ビジネスの責任者であり、Onshape創設者の一人でもあるジョン・ハーシュティック(Jon Hirschtick)氏と、同社のEVPおよびARビジネスのゼネラルマネジャーであるマイク・キャンベル(Mike Campbell)氏が、「SaaS:The Architecture for the New Normal(SaaS:ニューノーマルにおけるアーキテクチャ)」のタイトルで講演を行った。
以前からアジャイル型プロジェクトやモバイルワークは増加していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機はその流れをさらに加速させた。COVID-19の状況下でますます存在感が増しているのが、SaaS型の各アプリケーションやコラボレーション機能である。両氏はこれらについて最新事例を交えながら紹介するとともに、PTCの新SaaSプラットフォーム「Atlas」の概要についても紹介した。またAtlasに搭載されるARソリューション「Vuforia」に新たに登場したオープンソース開発環境についても語った。
Atlasは、マルチユーザー/マルチテナントのSaaSプラットフォームである。PTCが2019年11月に買収したOnshapeが持つ、コラボレーション機能やデータ管理機能などを備えたクラウド3D CAD「Onshape」の技術をベースにしている。いずれはPTCのCADやPLM、ARをはじめ、ほぼ全てのアプリケーションを搭載する方針である。
キャンベル氏は講演の冒頭で、「クラウドを基盤とする技術は、もはや単に便利というだけではない。競争力を維持するために不可欠なものだ」と語った。ハーシュティック氏は、「クラウド技術を利用する企業は多くあるが、SaaSの形態が最もクラウドの価値を引き出し、利益を高められるといえる。SaaSはライセンス、展開、そしてアーキテクチャという3つの点で、従来の自社保有のソフトウェアと異なる」という。
ユーザーにとってのSaaSのメリットは、まず使用までの流れが簡単であることだ。インストールなどの煩わしい準備は必要ない。アカウントを作成し、プラットフォームにアクセスすれば、瞬時にサービスの提供が開始される。専用のハードウェアは必要なく、世界中にメンバーが散らばっていても共同作業や対話が行える。感染症のリスクも全くなく、ソーシャルディスタンスの時代にはうってつけといえる。
また「SaaSは、スケーラビリティと可用性という大きなメリットを提供する。企業の成長に応じて使用量を柔軟に変更できる。SaaSはもともと高い可用性を実現するように設計されている。24時間監視で製品の稼働を保証し、先進的な監視やセキュリティ層によってデータの安全性を確保する」(キャンベル氏)。
ハーシュティック氏は、「クラウドやSaaSのこういったメリットがあったからこそ、製品開発においてもこれらのメリットを享受してほしいと構築したのがOnshapeだった。今は数千の企業がOnshapeを利用している」という。
Onshapeは、非営利団体のMasksOn.orgによるCOVID-19向け医療用マスクの開発でも活用された。顔全体を覆うマスクの射出成形のフィルター用部品が、世界中のチームメンバーによって、Onshapeを使用してほんの数日で設計された。マスクは1万5000枚製造され、医療従事者に無料で配布されているという。「Onshapeは多くのCOVID-19関連プロジェクトで使用されている。チームで素早く作業する場合に最適な手段といえるからだ」(ハーシュティック氏)。
Atlas(旧Onshape)は、コアプラットフォーム上にCADをはじめとするさまざまなアプリケーションを搭載する。このプラットフォームにはユーザープロビジョニング、データ管理、データ変換や、クラウド展開、管理、分析などの技術が含まれる。数十のサードパーティーのアプリケーションが使用できるとともに、顧客のアプリケーションの利用例もあるという。PTCは、将来ほぼ全てのPTCのアプリケーションをAtlas上で実行できるようにすると発表している。これにより、より優れたSaaSアプリケーションを素早く構築、提供できるようになるとする。
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