PTCジャパンは、ARソリューション「Vuforia」の新製品で、3D CADデータを利用したインタラクティブなAR作業手順書の作成と活用を支援する「Vuforia Instruct」を発表した。製品品質の維持、向上に不可欠な点検/検査業務に特化した機能を提供し、デジタル化によって検査品質や作業効率の向上を実現する。
PTCジャパンは2021年6月9日、同社のAR(拡張現実)ソリューション「Vuforia」の新製品で、3D CADデータを利用したインタラクティブなAR作業手順書の作成と活用を支援する「Vuforia Instruct」に関するオンライン記者説明会を開催した。
Vuforia Instructは、同社の「Atlasプラットフォーム」上で提供されるSaaS(Software as a Service)型製品で、3D CADデータをフル活用したAR作業手順書の作成を支援するとともに、AR技術を用いた正確かつ効率的な点検/検査業務を実現し、リアルタイムでの記録や分析などに役立てることができる。提供開始は2021年6月21日(米国時間)を予定する。
「今回の新製品でフォーカスしているのは『製品品質』だ。製造業では常に品質を追い求める必要があるが、熟練技術者の高齢化や人手不足、製品の複雑化、顧客要求の多様化などの課題に直面しており、品質確保が難しい状況にある。徹底した品質管理ができないために不具合やリコールなどの品質問題が発生し、大きな損失をもたらすケースもみられる。製造業が抱える品質に関する課題の解決策として、PTCはARソリューションを提供していく」と、PTCジャパン 代表取締役の桑原宏昭氏は新製品の提供背景について語る。
品質を担保する上では、検査工程での取り組みが重要となる。しかし、実際には多くの企業で紙のマニュアルと対面指導などによるフィジカルでの知識、スキルの伝達が行われている状況だ。中でも紙のマニュアルが占める割合は非常に多く、「必要な情報が探せない」「内容が不正確/古い」といったことが原因で、ミスが生じたり、正しく点検/検査業務が行われなかったりといった状況が生まれている。その結果、作業のやり直しなどが頻発し、企業に多大なコスト、損失をもたらしている。
こうした課題に対して、新たに提供開始するのがVuforia Instructだ。
同社 製品技術事業部 プラットフォーム技術本部 本部長 執行役員の山田篤伸氏は「PTCは、点検/検査業務に関する課題をAR技術で解決する。3D CADデータを活用できるため、AR空間上で製品に対する的確な指示が可能となる。また、正しい状態としてどのように見えるべきなのかを、基となる3D CADデータと重ね合わせることで差異が一目で分かるため、質の高い検査を効率的に行える。検査の記録や状況報告についてもデジタルの強みを生かしてリアルタイムにフィードバックできるため、作業の改善や是正処置などに役立てられる。当然、検査が完了したどうかも一目瞭然であり、どの検査項目で不具合がよく見つかるかなど、統計情報を基にした分析も可能である」と、点検/検査業務におけるAR活用の有効性、Vuforia Instructの提供価値について述べる。
Vuforia Instructの適用領域については、具体的に、製造とフィールドサービスでの利用を想定する。製造では、検査トレーニング(教育)、仕入れ部品の品質検査、生産中部材の品質検査、製品の最終品質検査など、フィールドサービスでは、保守/修理後の検査、日常の保守検査/予防チェックなどでの利用がユースケースとして挙げられるという。「製品ライフサイクルの中で行われる全ての点検/検査業務に対して、Vuforia Instructが高い価値を発揮すると考えている」(山田氏)。
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