樹脂が金型に射出される際、金型を開く方向に力がかかります(図5)。この力のことを「射出力」といいます。それに対して、成形機が金型を締め付ける力を「型締め力」と呼びます。射出力が型締め力よりも大きいと、金型が開いてしまいバリが発生します。
製品の射出力は、その製品の投影面積で求めることができます。
製品の射出力(kgf)=
製品の投影面積(cm2)×射出される樹脂の圧力(kgf/cm2)
樹脂の圧力は目安となる数値(表1)がありますので、それを参考に射出力を求めます。なお、必要となるのは製品の投影面積ですので、その製品の高さは関係ありません(図6)。
精密成形品 | 400〜500kgf/cm2 |
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汎用成形品 | 300〜500kgf/cm2 |
充填剤入り | 上記数値より約20%高めに設定 |
表1 樹脂圧力P(kgf/cm2)の目安について |
成形機には「50t(トン)の成形機」といった具合に、型締め力があらかじめ決まっていますので、バリの発生を防ぐためにも、製品の射出力から最適な成形機を選定する必要があります。
1.と2.は、どちらかといえば“金型設計”の範疇(はんちゅう)でしたが、ここで紹介する内容は“製品設計”の守備範囲といえます。
複雑なPLは金型の調整や合わせが難しく、バリなどの不具合が発生しやすくなります。そのため、“PLは可能な限り単純な面にすべき”です。
とはいえ、相手部品との関係性などから、PLを簡単に単純化できないこともあるでしょう。そのような場合には“抜き勾配を調整してPLの位置をずらす”というのも1つの対策として考えられます。
ただし、図8(右)のようにPLを単純化した場合、製品の外観にPLの線が残ってしまいますので、製品外観の品質を重視するのであれば、単純化によるアプローチは避けた方がよいでしょう。
また、金型としてPLをどの程度単純化した方がよいのか? については、デザイナーや製品設計者だけで判断するのが難しいこともあるので、可能な範囲で金型設計者や金型メーカーに相談することをオススメします。 (次回へ続く)
落合 孝明(おちあい たかあき)
1973年生まれ。株式会社モールドテック代表取締役(2代目)。「作りたい」を「作れる」にする設計屋として、デザインと設計を軸にアイデアや現品に基づくデータ製作から製造手配まで、製品開発全体のディレクションを行っている。文房具好きが高じて立ち上げた町工場参加型プロダクトブランド「factionery」では、第27回 日本文具大賞 機能部門 優秀賞を受賞している。
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