矢野経済研究所は、3Dプリンタ世界市場に関する調査結果の概要を発表した。2020年の3Dプリンタ世界市場規模はCOVID-19の影響を受け、出荷台数が減少し、前年比99.7%の36.4万台となった。また、2017〜2023年までの年平均成長率(CAGR)は5.4%で推移し、2023年の3Dプリンタ世界市場規模は37万台になると予測している。
矢野経済研究所は2021年4月12日、3Dプリンタ世界市場に関する調査結果の概要を発表し、需要分野別の動向、参入企業動向、将来展望について明らかにした。
2020年の3Dプリンタ世界市場規模(メーカー出荷数量ベース)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けて出荷台数が減少し、前年比99.7%の36.4万台となった。また、2017〜2023年までの年平均成長率(CAGR)は5.4%で推移するとみられ、2023年の3Dプリンタ世界市場規模(同)は37万台になると予測している。
COVID-19がもたらしたサプライチェーンの分断や医療物資不足などを受け、3Dプリンタ活用への関心が高まり、実際に個人用防護具(PPE)やフェイスシールドを3Dプリンタで製造し、医療現場などへ無償提供する動きなども世界中で見られたが、3Dプリンタの出荷台数そのものは想定よりも伸びなかったという。
また、以前から産業用3Dプリンタを量産適用する動きも活発化していたが、コロナ禍によって高額な装置導入を見直す動きもあり、それが出荷台数の鈍化につながったとしている。こうした厳しい状況については、COVID-19の世界的流行を契機に財務状況が厳しくなった企業も多いことから、2023年ごろまで続くとみられている。
プラス要因としては、COVID-19を契機とするサプライチェーンの見直しにおいて、3Dプリンタの利用価値があらためて評価されたことが挙げられる。Withコロナ/ニューノーマルの時代では、輸送コストの削減や現地需要に基づいた製造を行うなどの観点から、3Dデータを共有して必要とする現場近くで生産できる3Dプリンタ活用への期待は大きい。
また、企業における3Dプリンタの利用目的についても変化が見られ、単に不足部品の代替品を製造するだけでなく、最終部品の短期的な開発、製造に貢献するツールとしての利用検討も今後さらに活発化していく見通しであるという。
3Dプリンタ世界市場を見てみると、欧米と中国を中心に、航空宇宙/自動車/金型/医療/宝飾などの分野で実用化、量産適用が積極的に進められている。中でも自動車分野では、軽量化や性能向上、燃費向上などを目的とした3Dプリンタ活用ニーズの伸びが期待される。
さらに、近年は3Dプリンタによる造形物の後加工(サポート材の除去を含む)を省力化できる製品やサービスなどが増加しており、以前よりも3Dプリンタを活用しやすい環境が整いつつあるという。
一方、装置自体も、課題の1つとして挙げられる造形速度の改善(高速化)に向けたさまざまな技術革新がメーカー各社により進められている。そして、造形物の大型化、使用できる材料の多品種化、造形物の品質保証の確立などが進めば、3Dプリンタ世界市場の成長スピードはさらに加速していくとみられる。
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