【トラブル5】成形品に予期せぬ線が!? ウェルドラインの仕組みとその対策2代目設計屋の事件簿〜量産設計の現場から〜(5)(3/3 ページ)

» 2021年04月08日 10時00分 公開
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極端に肉厚が異なる成形品の場合

 続いて、部位によって極端に肉厚が異なる成形品の例を見てみましょう(図6)。

極端に肉厚が異なる成形品 図6 極端に肉厚が異なる成形品 [クリックで拡大]

 このような肉厚が極端に異なる場合の樹脂の流れですが、基本的に厚肉部分は樹脂が流れやすく、薄肉部分は流れにくくなります。つまり、先に厚肉部分に樹脂が流れていき、その後、薄肉部分に樹脂が流れる傾向にあるため、薄肉部分でウェルドラインが生じます(図7)。

この場合、薄肉部にウェルドラインが生じやすい 図7 この場合、薄肉部にウェルドラインが生じやすい [クリックで拡大]

 当然ですが、成形品の肉厚を均一にすれば樹脂の流れやすさも均一化されますので、ウェルドラインの発生を防ぐことができます。こちらは金型設計というよりも“製品設計の領分”といえるでしょう。

今回のまとめ

 ウェルドラインは射出成形で製品を成形する上で、完全に防ぐことが難しく、ウェルドラインが発生した位置は外観不良や強度低下といった事態を招きます。その対策としては、金型設計においてゲート位置を調整することや、製品設計において肉厚を可能な限り均一にすることが挙げられます。

 ゲート位置の調整については金型設計の領分であるため、製品設計とは無関係のように思われるかもしれませんが、樹脂製品の設計をするのであれば、ウェルドラインの発生メカニズムとその対策について理解を深めておいて損はありません。

 強度が必要な部分やユーザーの目に見える部分(製品の外観)にウェルドラインを出さないよう、金型を意識したより良い設計、より良い製品づくりにぜひ生かしてください。 (次回へ続く

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Profile

落合 孝明(おちあい たかあき)

1973年生まれ。2010年に株式会社モールドテック代表取締役に就任(2代目)。現在、本業の樹脂およびダイカスト金型設計を軸に、中小企業の連携による業務の拡大を模索中。「全日本製造業コマ大戦」の行司も務める。また、東日本大震災をうけ、製造業的復興支援プロジェクトを発足。「製造業だからできる支援」を微力ながら行っている。



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