住友ゴム工業と東北大学 多元物質科学研究所は2021年3月8日、ゴム破壊の観察に用いるX線CT撮影で、従来の手法と比べて1000倍速の高速撮影に成功したと発表した。従来の手法では、ゴム破壊の1枚の3D画像を撮影するのに数秒間を要していた。連続的かつさまざまな速度で3D観察が可能になるのを生かし、タイヤの耐摩耗性能を向上させる新材料の開発を加速させる。
住友ゴム工業と東北大学 多元物質科学研究所は2021年3月8日、ゴム破壊の観察に用いるX線CT撮影で、従来の手法と比べて1000倍速の高速撮影に成功したと発表した。従来の手法では、ゴム破壊の1枚の3D画像を撮影するのに数秒間を要していた。連続的かつさまざまな速度で3D観察が可能になるのを生かし、タイヤの耐摩耗性能を向上させる新材料の開発を加速させる。
住友ゴムでは、大型放射光研究施設「SPring-8」を活用した4次元X線CT(4D-CT)法によって、耐摩耗性能を向上する材料の開発を行なってきた。ただ、1枚の3D画像の撮影に数秒を要するため、ゴムを高速に伸張させてタイヤ表面の変形状態を再現する場合に鮮明な画像を得るのが難しく、より鮮明な画像を得る上で撮影スピードの高速化が課題となっていた。
東北大学とともに4D-CT法を高速化する技術開発を進め、0.01秒での撮影に成功した。これにより、実際にタイヤが摩耗するときに近い状態を再現しながら、ゴムの破壊箇所を詳細に観察することが可能になる。これにより、耐耐摩耗性能に優れた長寿命のタイヤの開発をさらに推進する。
住友ゴムは、独自の新材料開発技術「ADVANCED 4D NANO DESIGN」により、ゴム中における分子レベルのミクロな破壊現象からマクロな摩耗現象まで、これまでは確認できなかった現象を可視化する取り組みを進めてきた。これらの取り組みのベースになるのは、大規模なモデルを用いて原子や分子の動きをよりリアルな現象として把握できるシミュレーション技術だ。SPring-8でゴムの構造解析を、世界最高クラスの中性子実験ができる「J-PARC」で運動解析を行った上で、材料中の原子、分子の動きを把握する。それらの解析結果を用いてスーパーコンピュータによるゴムモデルのシミュレーションを行なってきた。
SPring-8は、自動車関連ではバッテリーの研究開発でも活用されている。日産自動車は、充放電によって、バッテリー内部の成分や蓄積できるエネルギー量にどのような変化が起きるか分析し、リチウムイオン電池の劣化のメカニズムを明らかにした。成分のコントロールや添加剤の選択によって性能保証期間を延ばし、8年16万kmまで保証することができた。
トヨタ自動車は、ラミネート型の電池セルを分解することなく、X線での撮影によって充放電時のリチウムイオンの挙動をリアルタイムに観察する手法を開発した。電極や電解液の中で起きるリチウムイオンの濃度の偏りをなくすことがリチウムイオン電池の性能向上に向けた課題となっていたためだ。
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