日本生産性本部は2020年12月23日、労働生産性を国や産業別に比較したレポートを発表した。国内製造業の労働生産性はOECD加盟国中で16位だった。
日本生産性本部は2020年12月23日、労働生産性を国や産業別に比較したレポートを発表した。本稿ではその中から、国内製造業の労働生産性や、OECD加盟国との国際比較に関する報告を抜粋して紹介する。
同レポートでは、労働生産性について1年間当たりの付加価値を労働投入量で割った値だとした上で、国際比較に当たっては産業別の購買力平価を考慮する必要があると説明する。ただし、世界銀行やOECDが公表する購買力平価は国レベルのもので、産業別の比較には適さない。そのため、製造業の国際比較を行う上では、同業種の価格変動をある程度調整する役割を果たす為替レートを用いたという。
調査の結果、2018年の国内製造業における労働生産性は9万8795米ドル(約1024万円)だった。レポート作成時点で2018年分のデータが得られたOECD加盟31カ国の中では16位と、ほぼ中位に位置する。ただ、日本は1995〜2000年の間は1位などトップクラスに位置していたが、2005年には9位、2010年には11位、2015年には16位と徐々に後退している状況だ。
なお、時系列でみると、国内製造業の労働生産性は1995〜2018年にかけて平均で2.7%上昇し、2010〜2018年に限ると平均で1.9%上昇している。主要先進7カ国(G7)に限って比較すると、2010〜2018年にかけての上昇率は、フランス(平均2.9%上昇)と同率でトップに位置する。また、1995〜2018年にかけての上昇率は、米国(平均3.7%上昇)、フランス(同2.9%)に次いで3位だった。
OECD加盟31カ国で製造業における労働生産性が最も高かったのは、アイルランドで54万2457米ドル(約5619万円)だった。次いで2位はスイスで19万6108米ドル(2031万円)、3位がデンマークで15万1410米ドル(約1568万円)、4位が米国で14万8480米ドル(約1538万円)と続く。米国製造業の労働生産性は、日本の約1.5倍にあたる。
レポートでは1位となったアイルランドについて、「1990年代後半から法人税率を他国と比べて低く設定し、製造業を含めたグローバル企業の欧州本部や本社機能を誘致することに成功した。欧州事業の本社機能をアイルランドに置くメーカーも多い。欧州エリアの利益は全て本社に計上されるが、従業員数は多くなく、結果として高い労働生産性を達成している」(レポートより)と指摘した。
また、2位となったスイスについては「同国にはロレックスをはじめとする時計などの精密機械企業や、産業ロボットを製造するアセア・ブラウン・ボベリなどのエンジニアリングメーカー、ノバルティスなどの医薬品企業、ネスレなどの食品企業など、多数のグローバル企業が本拠点を構えている。高付加価値化の源泉となるブランド力や高度な知識、技術力を持つこれらの企業を中心に産業クラスタが国内各地に形成されており、これらを軸とした経済構造が高い労働生産性水準に結び付いている」(同)と分析している。
主要先進7カ国について見ると、フランスは10万4188米ドル(約1079万円)で13位、ドイツは10万476米ドル(約1040万円)で14位、英国は9万7373米ドル(約1008万円)で17位などとなった。
なお、同レポートでは、非製造業の業種も含めた国内全体の労働生産性についても報告している。2019年の就業者1人当たりの労働生産性は8万1183ドル(約841万円)で、OECD加盟37カ国の中では26位、時間当たり労働生産性は47.9ドル(約4962円)で同21位となった。
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