「2020年版ものづくり白書」を読み解いてきた本連載だが、今回はその中で取り上げられてきた「製造業のデジタル化」についてものづくり白書を担当する経済産業省 製造産業局 ものづくり政策審議室 課長補佐の渡邉学氏に話を聞いた。
2020年5月に公開された「令和元年度ものづくり基盤技術の振興施策」(以下、2020年版ものづくり白書)を読み解く本連載だが、これまで3回にわたって日本の製造業の現状と今後日本の製造業が講じるべき対策について紹介してきた。今回はここまで取り上げてきた内容を踏まえつつものづくり白書の作成を担当した、経済産業省 製造産業局 ものづくり政策審議室 課長補佐の渡邉学氏にインタビューを行い、「製造業のデジタル変革は本当に進んでいるのか」という点について掘り下げる。
MONOist 2020年版ものづくり白書ではさまざまな調査結果を示していますが、こうしたデータを見てみると「製造業の現場でのデータ活用」が停滞しているようにも見えます(図1〜5)。こうした状況についてどうお考えでしょうか。
渡邉氏 ネガティブに見える調査結果があったのは事実ですが、ものづくり白書に掲載している調査結果は一部であり、その他のアンケート結果なども組み合わせて考えると「製造業がデジタル化に対してネガティブになった」ということはないと考えています。
例えば、国内製造業に対してデジタル化の目的について尋ねたアンケートでは「コストダウン」や「リードタイムの短縮」などが上位に挙げられており、デジタル化そのものに意味がないとは思われていないと考えます。それでは、なぜこのような結果になっているということですが、現場ではデジタル化というよりも、現在はその前段階として各部門の連携強化が進められているのではないかと推察しています。
私自身も重電メーカーで発電用タービンの設計に従事した経験がありますが、その経験から振り返っても、製造業における各部門はタコツボ化しているところがあります。そのため、デジタル化まではまだたどり着いておらず、これまでやりとりのなかった部門同士がやりとりを始めた段階なのではないでしょうか。デジタル変革を進め、デジタルの世界で業務がシームレスにつながる世界を描く前に、まずはフィジカル(アナログ)の世界で組織や体制などの前準備を整えるということに注力しているのだと考えます。今後、各部門が連携をしていくなかで、さらに情報を早く収集する必要がでてきた際には、デジタル化に向かう意識が芽生えると思いますが、まだそこまで進んでいないのではというのが私の個人的な考えです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.