ステイホームで注目を集める「DIY」をテーマに、設計から製作までのプロセスを、実際の製造業におけるモノづくりの視点を交えながら解説することで、DIY素人の皆さんに“玄人のエッセンス”を伝授する。最終回となる第5回では「スマホスタンド」のモデリングから実際の加工、仕上げまでを一気に紹介する!
皆さん、こんにちは! Material工房・テクノフレキスの藤崎です。
前回「三平方の定理」に触れたことで、DIYといえども多少の数学的知識が必要になるということをご理解いただけたかと思います。
では早速、前回に引き続き「スマホスタンド」の設計に取り掛かりましょう!
スマホスタンドの背板の傾きを何度にするか決めます。角度はお好みですが、30度、45度、60度の3つの傾斜感を比較してみます。イメージをつかむため、ここでは「プロトラクター」を使ってみることにします。
30度ではかなり背板が寝ている状態です。うつ伏せに寝転んで動画を楽しむときにはちょうどいい角度かもしれません。
ただし、背板と支え板(足)が下方で交差していると、充電ケーブルを後ろに逃がす空間が狭くなることが容易に想像できます。
だからといって、背板の上方に支え板を持っていくと、今度はスマホを乗せるスペースが足りなくなるので、背板を長くしないとまずそうです。この条件では外観的にも、コスト的にも問題が多いように感じます。
45度ではどうでしょうか。何だか“可もなく不可もなく”といった角度のような気もしますが……。ただ、自分の姿勢と目線の高さによっては、やや上方から見下ろすような、のぞき込むような感じになりそうです。また、充電ケーブルを逃がす空間もそれなりに確保できそうです。
最後に60度です。30度から順に検討してきたので、かなり起き上がっている印象ですが、充電ケーブルを逃がす空間もしっかりと取れていますし、デスクワーク中、あるいは食事中にスマホをチラ見する際など、視線の移動が少なくて済みそうです。
うつ伏せ寝でぐうたらしながら動画を見ることが多かったり、キッチンの壁にスマホを立て掛けてレシピサイトを見たりする筆者は、「背板の長さを伸ばして30度にしようか、60度にしようか……」と迷ったのですが、ここは60度で設計を進めることにします!
角度を決めたら、どの位置で背板と支え板(足)を交差させるかを決めます。
直尺でサイズ感を見ながら位置を決めたら、線を引いて略図を描いてみます。板の厚みとスマホを受ける部分の寸法は、先のポンチ絵で描き出したので、それを考慮しながら、三平方の定理を使って支え板の長さ寸法を算出します。
計算する際、略図上の直角三角形の辺の位置に注意してください。この場合、支え板の長さにあたる辺は「√3」になります。この√3は60.62mmという半端な数値なので、四捨五入して61mmにしましょう。スマホを受ける部分は15mmの計画ですから15+61=76mm。さらに、ここに背板の板厚6mmをプラスして82mmが支え全長になります。
ここまでの計算ができたら、「Fusion 360」を使ってモデリングをしながら、デザイン上の細かい部分を調整していきます。
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