特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2020年03月18日 11時00分 公開

RaaSやTaaSをも超える、サプライウェブ時代の新たなプラットフォーマーとはサプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会(8)(3/3 ページ)

[小野塚征志(ローランド・ベルガー),MONOist]
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データビジネスの重要性

 現時点で存在するマッチングビジネスの多くは、「モノを運んでほしい人」「モノを運びたい人」「モノを受け取りたい人」といった特定少数のニーズを組み合わせるだけのものですが、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の進化はその対象を飛躍的に拡大すると予想されます。WMSやTMSといった管理システムに接続するだけではなく、交通情報や気象予報、資源・原材料の市場価格、地域別・チャネル別の販売実績、エンドユーザーの商品選好、中古の取引相場、輸出入関税、港湾・空港関係使用料などの変化もビッグデータとして取り込むようになるはずです。

全ての情報をつなぐことでの全体最適の実現 全ての情報をつなぐことでの全体最適の実現(クリックで拡大)

 物流センターでの作業量は数時間前までに正確に予測され、かつ、適宜補正されるため、パートやアルバイト、ロボットを過不足なく確保できるようになります。出荷のタイミングは的確にコントロールされており、トラックはその直前に到着するため、物流センターの近くにトラックの待機所を用意する必要はなくなるでしょう。納品先までのリードタイムも正確に予測されており、トラックは予定通りの時間に荷物を届けられます。渋滞が予想される場合には、出荷のタイミングが前倒しされるという算段です。

 港湾でのオペレーションもリアルタイムでトレースされるようになります。現在東京港では、トレーラーがコンテナを引き取るために数時間もの待機を強いられており、周辺道路での渋滞の原因になるなど社会問題を引き起こしていますが、あらかじめ引き取りの時間を指定されるようになれば、港湾付近での待機は不要になるはずです。トレーラーの現在地情報をトレースし、各車の到着タイミングに合わせてコンテナを並び替えておくことで、引き取りの作業時間を短くすることも考えられます。

 資源・原材料の調達先は市場価格の変動に応じて自動的に見直されるようになるでしょう。商品の生産量や在庫量は、地域別・チャネル別の販売実績やエンドユーザーの商品選好、中古の取引相場をもとに補正されます。輸出入に当たっては、物流費だけではなく、関税や港湾・空港関係使用料なども加味して最適なルート、輸送手段が選ばれるようになります。

 つまるところ、サプライウェブに関係するさまざまな情報をリアルタイムで収集できるようになれば、「トラックでの輸送」や「物流現場での作業」といった特定のプロセスにとどまらない全体最適を実現できるようになるわけです。それは、RaaSやTaaSの事業展開以上にポテンシャルのあるプラットフォームビジネスといえるでしょう。自動運転トラックやロボットを「人に代わる存在」と捉えるのではなく、全体最適を実現するための「情報収集ツール」としてネットワーク化することができれば、サプライウェブ時代のプラットフォーマーとなることも夢ではないはずです。



 さて、本連載は、“サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会”と題して、先進企業の動向と、新たなプラットフォームビジネスの可能性を紹介してきたわけですが、次回は特別編として、サプライチェーンの維持・継続を図るためのリスクマネジメントの在り方を取り上げたいと思います。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は世界的規模にまで拡大し、WHO(世界保健機関)はパンデミックを宣言するに至りました。サプライチェーンが寸断されることで、事業活動の継続が困難になった企業も少なくありません。われわれは、このような危機に対して、どのような備えを講じておくべきなのでしょうか。サプライチェーンの継続性を高めるための方策を解説します。

筆者プロフィール

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小野塚 征志(おのづか まさし) 株式会社ローランド・ベルガー パートナー

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革等を始めとする多様なコンサルティングサービスを展開。2019年3月、日本経済新聞出版社より『ロジスティクス4.0−物流の創造的革新』を上梓。

株式会社ローランド・ベルガー
https://www.rolandberger.com/ja/Locations/Japan.html

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