特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

「RaaS」が“手でモノを運ぶ作業”から人を解放するサプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会(7)(1/4 ページ)

物流の第4次産業革命ともいえる「Logistics 4.0」の動向解説に加え、製造業などで生み出される新たな事業機会について紹介する本連載。第7回は、従来の物流現場で人が担ってきた「作業」を物流ロボットなどで自動化するRaaS(Robot as a Service)を取り上げる。

» 2020年02月27日 10時00分 公開

⇒連載『サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会』バックナンバー

GTP――棚ごと商品を運んでくるロボットの活用

 前回は、サプライウェブの1つの方向性としてTaaS(Truck as a Service)による新たな輸送プラットフォームの出現を取り上げました。今回は、「輸送」ではなく、物流現場での「作業」を対象に、RaaS(Robot as a Service)によるプラットフォームビジネスの展開を解説したいと思います。

 物流現場において、最も多くの工数を要する作業の1つは、指定された商品を保管棚まで取りに行き、梱包場所まで持っていく「ピッキング」といわれるプロセスです。特に、Eコマースの物流センターのように、保管されている商品の種類が多く、需給の変動が大きく、かつ出荷ロットが少ない現場では、自動倉庫をはじめとする従来型のマテハン機器では十分な投資対効果を得られません。それゆえ、人海戦術で対応せざるを得なかったわけです。物流ロボットの進化と活用の拡大は、この状況に変化をもたらそうとしています。

 アマゾン(Amazon.com)は、2012年にロボットメーカーのKiva Systems(現Amazon Robotics)を買収し、ピッキングプロセスの自動化を進めています。同社の物流ロボット「Kiva(現Drive)」は、掃除ロボットを大きくしたような形状であり、保管棚の下に入り込み、持ち上げて、出荷する商品を棚ごと運んでくることができます。

アマゾンの物流ロボット「Drive」 アマゾンの川崎FC(フルフィルメントセンター)で運用されている物流ロボット「Drive」(クリックで拡大) 出典:アマゾン

 アマゾンでは、ピッキングの作業員を1日に20kmも歩かせる労働環境が問題になっていました。作業員は、指定された場所まで商品を取りに行き、梱包場所まで持っていくという作業を1日中繰り返す必要があったからです。Driveを導入した物流センターでは、Driveが棚ごと商品を運んできてくれるので、歩行の必要はなくなりました。作業員は、Driveが運んできた保管棚から指定の商品を取り出して、梱包するだけでよくなったのです。

「Drive」の仕組み 「Drive」の仕組み(物流センターを上方から俯瞰したときのイメージ)(クリックで拡大)

 アマゾンは、世界各国の物流センターに10万台以上のDriveを導入し、労働生産性を高めることに成功しました。日本でも、2016年12月から導入され、既に複数の物流センターで運用しています。

 Driveのように、棚ごと商品を運んできてくれるタイプの物流ロボットを「GTP(Goods To Person)」といいます。アマゾンは、Kiva Systemsを買収後、Driveを門外不出にしましたが、日立製作所やインドのGreyOrange、中国のGeek+などは、Driveと類似の機能性を有するGTPを製造、販売しており、さまざまな物流センターで活用されています。GTPの導入コストは着実に低下しており、今後の普及・拡大が予想されます。

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