特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

「RaaS」が“手でモノを運ぶ作業”から人を解放するサプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会(7)(2/4 ページ)

» 2020年02月27日 10時00分 公開

AMR――人とともに働くロボットの活用

 GTPとは異なる発想でピッキングの省人化を成し遂げようとする物流ロボットも実用化しつつあります。人とともに働くことを前提とした「AMR(Autonomous Mobile Robot)」は、その最注目株といえるでしょう。

 米国のフルフィルメントプロバイダーであるQuiet Logisticsからのスピンオフで設立されたLocus Roboticsは、AMRの先進ベンチャーです。同社の物流ロボット「Locus Bots」は、GTPと比べて一回り小さく、より敏しょうに動くことができます。

オランダのCEVA Logisticsは「Locus Bots」を採用した オランダのCEVA Logisticsは「Locus Bots」を採用した(クリックで拡大) 出典:Locus Robotics

 Locus Botsは、ピッキングする商品が置かれた保管棚の前で待っています。作業員は、Locus Botsの上部にあるディスプレイに表示された商品を棚から取り出し、Locus Botsが運んできたカゴの中に入れます。作業員が所定のボタンを押すと、Locus Botsは作業員に「次に行くべき場所」を伝えた上で、次にピックアップすべき商品が置かれた棚の前か、梱包場所まで移動します。作業員がLocus Botsに指示された場所まで移動すると、そこには棚から商品を取り出してくれることを待っている他のLocus Botsがいる、という具合です。

「Locus Bots」の仕組み 「Locus Bots」の仕組み(物流センターを上方から俯瞰したときのイメージ)(クリックで拡大)

 GTPと違って、「作業員の歩行」が完全になくなるわけではありませんが、棚から棚へ、あるいは、棚から梱包場所への長距離の移動をAMRが担うことで、作業員をある程度削減できます。結果として、GTPほどではないにしても、労働生産性が向上します。

 GTPとの決定的な違いは、もともとの倉庫設備をそのまま利用できることにあります。GTPのように、ロボットが持ち上げられる保管棚を用意する必要はありません。その分だけ、初期投資を抑制できます。

 ロボットを段階的に投入できることも優位点といえます。AMRであれば、最初に1台を投入し、効果があれば2台目以降を順次投入する、ということも可能です。出荷量に応じてロボットの投入台数を柔軟に変更することも比較的容易です。

 GTPの場合、ロボットが動くエリアを明確に指定する必要があります。そこに人は立ち入れません。棚を動かす作業を全てロボットに任せることになるので、最初から必要台数をそろえる必要があります。ロボット1台あたりの導入費用が数百万円を下らないこと、数十台規模以上での運用が前提となることを踏まえれば、総額では億単位の投資が必要となるわけです。

 AMRの最大の難点は、導入実績が少ないことです。Locus Robotics以外にも、AMRの開発・製造に取り組んでいるメーカーは少なからず存在しますが、物流センターでの稼働台数はGTPを大きく下回ります。今はまだ導入効果の見極めが難しい黎明期にあるといえるでしょう。

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