物流の第4次産業革命ともいえる「Logistics 4.0」の動向解説に加え、製造業などで生み出される新たな事業機会について紹介する本連載。第6回は、物流の主な担い手であるトラック業界を大きく変えるであろうTaaS(Truck as a Service)を取り上げる。
⇒連載『サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会』バックナンバー
前回、サプライチェーンがサプライウェブに進化しようとしていること、その担い手となるプラットフォームビジネスの躍進が予想されることを解説しました。今回は、その1つの領域として、TaaS(Truck as a Service)による新たな輸送プラットフォームの出現を取り上げたいと思います。
前回の記事でも少し言及しましたが、自動車業界はCASE(Connected、Autonomous、Shared&Service、Electric)の荒波にもまれようとしています。自動車がさまざまな情報機器と相互につながるようになれば、モビリティネットワークを支える端末として機能するようになるでしょう。自動運転が進めば、ドライバーレスにより移動コストが大幅に下がります。無人タクシーが普及すれば、自動車は「買うもの」ではなく「都度利用するもの」に変わるはずです。そして、電動化が進めば、部品点数は顕著に減少し、自動車メーカーを中心としたモノづくりの在り方は根底から覆る可能性があります。
この変化は、当然のことながら一般の乗用車に限られるわけではありません。物流で主要な役割を担っているトラック業界を取り巻く事業環境も様変わりするはずです。中でも、自動運転(Autonomous)は、トラックへの導入が先行的に進むと予想されます。自動運転化することによる社会的価値が大きいからです。
Eコマースの伸長、出荷の小ロット化などを背景とするトラックドライバーの不足は、先進国共通の課題となりつつあります。特に日本においては、単純なドライバー数の不足のみならず、高齢化にも対応する必要があります。昨今、高齢ドライバーによる交通事故が社会問題になっていることを踏まえると、自動運転の実用化なくしてトラック輸送網の維持・拡充は図れないと考えるべきかもしれません。
世界最大のトラックメーカーであるダイムラー(Daimler)は、2025年までの実用化を目標に、自動運転トラックの開発に取り組んでいます。2015年に公開された自動運転トラック「Freightliner Inspiration」は、交通量の多い高速道路を時速80kmで自動走行できます。既に欧州と米国の公道で試験走行を開始しており、その模様はメディアにも公開されています。
自動運転トラックの実用化に向けた取り組みは、ダイムラーだけではなく、ボルボ(Volvo Trucks)やスカニア(Scania)、日系の日野自動車やいすゞ自動車も力を入れています。現在では、商用車メーカーのみならず、テスラ(Tesla)やウェイモ(Waymo)などのテック系のメーカーも自動運転トラックの試験走行を開始するに至りました。「CES 2020」では、ZFやヴァレオ(Valeo)といった自動車部品サプライヤーも輸送車両の自動運転システムを発表しています。
各社の研究開発状況を察するに、自動運転トラックが公道で実際に動いている姿を目にする日もそう遠くはないのかもしれません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.