ソフトウェアメーカーにとってのもう1つの事業機会は、マッチングビジネスの拡大です。荷主・荷物と物流リソースをデジタルマッチングするビジネスは、その代表例といえるでしょう。
東南アジアでは、「仕事を得たいトラックドライバー」(求貨)と「荷物を運んでもらいたい荷主」(求車)をデジタルマッチングする求貨求車サービスが都市部を中心に普及しつつあります。香港発のスタートアップであるLalamoveは、同ビジネスを展開するトップランナーの1社です。同社は、2013年の創業から急速に成長しており、現在では中国、台湾、タイ、フィリピン、ベトナム、シンガポールなどでもサービスを提供しています。
仕組みとしてはUberのタクシー配車システムに似ており、荷主は所定のアプリをダウンロードした上で、発地・着地の住所、出発時間、配送車両の種類などを指定するだけという簡便さです。ドライバーは、アプリ上に表示された注文リストの中から請け負いたい仕事を選択します。マッチングの確定後、荷主とドライバーは直接会話することで荷物の詳細や積み下ろしの方法などの諸事項を確認します。
Lalamoveは、イケア(IKEA)やバーガーキング(Burger King)といったチェーンストアの配送をも請け負うことで、事業の基盤となるベースカーゴを確保することに成功しました。一方で、家電・家具の宅配や引越にも対応することで、事業の裾野を広げていっています。
マッチングビジネスの対象はトラック運送だけに限られるものではありません。米国のベンチャー企業であるInstacartは、「誰かに食料品を買ってきてもらいたい消費者」と、「空いている時間に仕事をしたい一般個人」と、「食料品の宅配サービスを提供したいスーパーマーケット」をマッチングするサービスを提供しています。UberのデリバリーサービスであるUber Eatsも、「デリバリーサービスを利用したい消費者」と、「空いている時間に仕事をしたい一般個人」と、「出前を届けてほしい飲食店」をマッチングするビジネスであり、両社のコンセプトはとてもよく似ています。いずれも「空いている時間に仕事をしたい一般個人」を活用することで、モノを運ぶコストを低減しているわけです。
連載第5回では、サプライウェブの基本思想は「あらゆるプロセスがつながること」にあると記しましたが、「多対多」を結び付けるためには、相応のトランザクションコストを要します。だからこそ、人やトラックといったリソースの「空き時間」を活用するマッチングビジネスの重要性はますます高まるはずです。それは、ソフトウェアメーカーからすれば、紛れもなく有望な事業機会といえるでしょう。
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