高度化する自動車技術、修理や整備は追い付けるか:どうなる? 次世代車の整備(1)(3/3 ページ)
さらに、膨大に蓄積された車両データは、故障を減らして信頼性を高めるなど、クルマの開発にも応用することができます。トヨタ自動車は、DCM搭載車から収集した数千台分のペダル踏み間違い時のデータを活用し、周辺監視センサーが障害物を検知していない場合でも踏み間違いに対応できる「急アクセル時加速抑制機能」を開発しました。車速、アクセルペダルの操作速度、踏込み量、上り坂かどうか、直前のブレーキ操作の有無、右左折中かどうかなどを基準に踏み間違いを判断するアルゴリズムを採用します。
コネクテッドサービスは、乗用車に先行して商用車で導入されています。商用車を使用してビジネスを展開する物流事業者にとって、車両故障などによる車両の稼働率低下は収益に大きな影響を及ぼします。実際にコネクテッドサービスを導入した結果、予防整備による故障率の低下や、適正なタイミングの整備入庫により、車両の稼働率が向上しました。ドライバー不足や収益性改善に頭を悩ます物流事業者のビジネスをサポートしています。
一方でコネクテッドカーの普及にもさまざまな課題があります。中でも大きな課題が、通信料金の負担です。2018年6月にコネクテッドサービスを本格展開したトヨタでは現在、車両購入から3年間は通信費を無料としていますが、4年目以降は年間1万6千円かかります。さらに日産スカイラインの場合、高速道路でのハンズオフ自動運転機能「プロパイロット2.0」の実現に必要な3次元高精度地図の更新などに使用するため、月額2万2千円の費用が必要となります。決して安くないこれらの費用を、将来的に誰が負担するのか。コネクテッドカーの全面普及の大きな障害といえます。
また、コネクテッドカーの整備環境の構築も課題となります。当面はメーカー系ディーラーが専用端末を用いて整備を行いますが、ディーラー以外の整備専業店では対応が難しいのが実情です。現在、国内には8000万台超の自動車保有台数があり、メーカー系ディーラーだけでは全てのクルマの整備を賄うことはできません。コネクテッドカーが本格的に普及し、クルマの低年式化が進んだ際に、ディーラー以外の整備工場でも対応できるような環境整備も求められることになります。
- クルマの自己診断機能「OBD2」の用途は“診断”だけじゃない
今やコンピュータの塊と言ってもいいクルマ。それらコンピュータが正常に動作していることを確認するための自己診断機能が「OBD2」だ。整備士などがOBD2から診断情報を取得するコネクタが全ての車両で同じことから、最近ではスマートフォンと組み合わせて他の用途にも利用されるようになっている。
- 高級車から広がる48Vシステム、ディーゼルエンジンに代わる環境技術に
聞いたことはあるけれど、正確に知っているかといわれると自信がない……。クルマに関する“いまさら聞けないあの話”を識者が解説します。第4回は、ディーゼルエンジンに対する逆風が強まる中、製品化が相次いでいる「48Vシステム」です。48Vシステムの特徴とは一体何でしょうか。
- 燃費と出力を両立する可変圧縮エンジン、日産が開発秘話語る
「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」(2019年5月22〜24日、パシフィコ横浜)では、話題の新型車開発の舞台裏を語る「新車開発講演」が行われた。この中で取り上げられたのが、量産エンジンとしては「世界初」(日産自動車)となる日産自動車の可変圧縮比(VCR、Variable Compression Ratio)エンジンだ。日産自動車 パワートレイン・EV開発本部 アライアンス パワートレイン エンジニアリング ダイレクターの木賀新一氏が、VCRエンジンと、これを搭載する「アルティマ」の最新モデルに関する開発秘話を語った。
- レクサスの安全システムをトヨタ車で民主化、ハード変更せずにコストを抑制
トヨタ自動車は2020年2月3日、東京都内で記者向けに説明会を開き、運転支援システムパッケージ「Toyota Safety Sense」や今後の安全システムの展開を発表した。
- スバルのADAS高度化の主役はステレオカメラ、車台にもまだ伸びしろ
SUBARU(スバル)は2020年1月20日、東京都内で記者会見を開き、中長期的に取り組む環境技術や安全技術の方針を発表した。あらゆる環境下で誰もがコントロールしやすく、意のままに操れることを目指した車台(プラットフォーム)づくりにも同時並行で取り組む。
- プロジェクター化するヘッドランプ、動くモノに追従した部分消灯が課題に
オートハイビームは軽自動車にも搭載されるなど広く普及しているが、プレミアムブランドや上位車種向けのヘッドランプは、部分的に消灯する技術の高精度化が進む。消灯する範囲を最小限に抑えるほど、他のより多くの部分にヘッドランプの光が当たり、歩行者や自転車、障害物を認知しやすくなる。各社の取り組みから、ヘッドランプの最前線を追う。
- カーエアコンの冷房はなぜ冷えるのか(前編)
夏場のドライブで大活躍するカーエアコンの冷房機能。一体どういう仕組みで冷やすことができるのか前後編に分けて紹介する。前編で説明するのは、冷房機能に必要不可欠な冷媒と、冷媒を使って冷やすための冷凍サイクルの全体像についてだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.