高度化する自動車技術、修理や整備は追い付けるかどうなる? 次世代車の整備(1)(2/3 ページ)

» 2020年03月09日 06時00分 公開
[友野仙太郎MONOist]
電子制御の整備に欠かせないのがスキャンツール。2024年からは車検の検査項目にも追加される(クリックして拡大)

 OBDは、外部故障診断機(スキャンツール)を接続することで電子制御のエラーコードなどが確認できる、クルマの電子制御の健康状態をチェックする数少ない手段の1つです。2024年から実施されるOBD検査では、排出ガス浄化装置やABS、ESCなどに加えて、自動車線変更機能や自動駐車装置など自動運転機能も対象となります。

 加えて国交省では道路運送車両法を改正し、近年急速に普及が進んでいる自動ブレーキなどに使用するカメラやレーダーといったセンサーに関する認証資格「電子制御装置整備」を新たに追加した「特定整備」制度を2020年4月からスタートします。ただ、整備現場での実態を踏まえて、制度導入には4年間の経過措置を設けることになりました。

 このように次世代車の安全性担保に向けた法整備は着々と進んでいます。ただ、クルマの保守管理というのはあくまでもユーザーの責任というのが現在のルールであり、車検制度もそのルールにのっとり整備されています。これが大きく変わる可能性を秘めているのが、自動運転車です。

ADAS(先進運転支援システム)や自動運転システムは、センサーをはじめとするさまざまな技術が正確に動作して初めて安全性が確保される(クリックして拡大)

 自動運転は技術レベルにより、単一の運転支援機能の「レベル1」から無人運転の「レベル5」まで大きく5つに区分されています。ドライバーの管理下において高度な自動運転が可能な「レベル3」までは、事故などの発生は最終的にドライバーの責任となるため、クルマの保守管理もこれまで通りユーザーの責任といえます。

 一方で完全自動運転となる「レベル4」以降は、有事の際にクルマ自体の責任も問われることになります。こうなるとこれまでの保守管理のルールでは通用しなくなります。当然、車検や整備そのものの在り方が大きく見直されることが予想されます。

 完全自動運転では、さまざまな高性能なセンサーが必要となる他、AI(人工知能)技術を含めた高度な電子制御が不可欠となります。加えて高精度マップや車車間および路車間通信などインフラとの協調も重要です。これらが正確に動作することで初めて安全な完全自動運転が実現します。そのためには次世代車に適したクルマの整備環境を構築することが不可欠となります。

つながるクルマで常時監視が不可欠なものの……

トヨタ自動車のコネクテッドカー向けスマートフォンアプリ「MyTOYOTA for T-Connect」。エンジンオイルなどの残量の他、警告灯の情報を見ることができる(クリックして拡大)

 すでに自動車メーカーでは、次世代車の整備に向けた取り組みが進んでいます。その取り組みの1つがコネクテッドカーです。

 トヨタ自動車は2018年6月、DCM(車載通信機器)を全車に標準装備とした「クラウン」と「カローラスポーツ」を発売しました。発表会でトヨタ自動車 社長の豊田章男氏は「コネクテッドカーの普及に本気で取り組む」と述べ、これを皮切りにトヨタでは新型車に相次いでDCMを搭載しています。2020年までに日米で販売される全ての乗用車にDCMを搭載してコネクテッドカーの普及を加速する方針です。

 日産自動車も2019年9月に大幅改良して発売した「スカイライン」にDCMを搭載しました。欧州メーカーも日系メーカーに先駆けてDCMの搭載を進めているなど、自動車メーカー各社はコネクテッドカーの普及を加速させています。

 整備におけるコネクテッドカーの利点は、クルマの状態をリアルタイムで常時監視できることです。CAN(車両制御ネットワーク)に接続したDCMから、車両状態からシステム不具合、走行データなどさまざまな情報を取得することができます。これにより不具合発生をいち早く把握できるだけでなく、走行距離などに応じて最適な時期に点検入庫を促すことで故障を未然に防ぐことも可能です。完全自動運転など安全性の担保が最優先される次世代車には不可欠な機能ともいえます。

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