既に37社が導入予定、THKが月額8000円の「LMガイドの予兆保全」サービスを開始製造業がサービス業となる日(2/2 ページ)

» 2019年12月11日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]
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50社以上のトライアルの中で37社が既に導入を希望

 「OMNIedge」は2018年10月に発表した後、トライアルユーザーを募集(※)。106件の応募があり、51社で実際にセンサーを設置しトライアルを行った。その中で既に成果が見えた37社に対しては「既に内示書を獲得。有償化の商談を進めているところだ」(寺町氏)とするなど、ビジネス化に向けた道筋が見えているという。

(※)関連記事:直動部品メーカーが仕掛ける製造業向けIoTサービスの意味、THKが参入へ

 トライアルには、輸送部品、電子部品、半導体、オプトエレクトロニクス、食品、衣料、材料系、鉄道、工作機械など多岐にわたる業界から応募があった。THKの従来の主要顧客企業は工作機械やロボットなどの機械メーカーだが、「OMNIedge」が対象として位置付けているのはこれらの機械を実際に活用しているエンドユーザーの工場である。

photo THK 取締役専務執行役員の寺町崇史氏

 寺町氏は「IoTによる遠隔監視や予防保全については、機器メーカーやロボットメーカーなどはさまざまな取り組みを進めているが、IoTによる恩恵を受けられるのは最新のモデルだけである場合が多い。そして、機器メーカーであれば、これらの機器の買い替えを促すのが自然な流れだ。ただ、THKも製造業の立場で感じるのが、全てを最新機器に入れ替えるのは投資対効果の面で不可能だということだ。基本的に多くの製造業で困っているのは、既存の古い設備を監視である。この既存の設備に対するサポートがなく、そこを『OMNIedge』で担うことを考えた」と語る。ただ、実際にトライアルを開始すると「ロボットメーカーなどが共同で展開しようという声なども生まれており、幅広い動きが出てきている」(寺町氏)としている。

 トライアルを通してブラッシュアップできた内容としては「対応できるシリーズやサイズを増やすことができた他、破損や潤滑状態を導き出せるアルゴリズムなどを増やすことができた。ただ特に強く感じたのが、われわれがLMガイドとしての破損として考える状態と、ユーザーが『問題あり』と感じる状態が異なるということだ。ユーザーが作るものや状態などによって、条件は大きく異なり、当社側で不具合を生む閾値を決めることができない。こうした多様性に対応するとともに、ユーザーが自由に閾値などを決定できるようにすることが大事だと感じた」と寺町氏は語っている。

 内示書が出た37社以外の企業についても「社内稟議をかけてもらっているところなどもあり、導入予定企業はまだまだ存在する」と寺町氏は自信を見せている。現状ではLMガイドの監視のみとなるが、2020年夏にはボールねじの監視サービスなども開始する予定だ。2019年12月18日〜2020年1月31日にかけて、ボールねじの試験導入企業50社の募集も行うとしている。寺町氏は「これらの取り組みにより3年以内に年間数十億円の事業に育てていきたい。なるべく早いタイミングで海外展開なども進める」と今後の取り組みについて述べている。

photo 「OMNIedge」の目指す姿(クリックで拡大)出典:THK

主要なプラットフォームにも対応を予定

 こうしたサービスは1社のみで行っても限界があるが、THKでは「基本的にはユーザーの求める形で、対応プラットフォームや対応デバイスなども拡大していく予定。自社の製品だけではなく、他社の製品にも活用可能としており、顧客のニーズを起点としてエンドユーザーが恩恵を受けるのであればそれに対応していく」と寺町氏は考えを述べている。

 今後に向けても2020年3月にはオンプレミス対応を進める他、2020年4月にはファナックが展開するIoT基盤「FIELD system」に対応し、マーケットプレースで「OMNIedge」のアプリを提供する予定だという。その後、2020年6月にEdgecrossとOPC UAに対応し、幅広いシステムとの連携を実現。また2020年7月にはシーメンスのIoT基盤「Mindsphere」に対応しアプリ提供を行う予定だとする。

photo 「OMNIedge」の今後の展開予定(クリックで拡大)出典:THK
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