ダッソー・システムズの年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE FORUM JAPAN 2017」の特別講演として、タイヤメーカーであるブリヂストンがデジタル変革をテーマに講演した。
フランスDassault Systemes(以下、ダッソー)の日本法人ダッソー・システムズは2017年6月6〜7日、都内でユーザーイベント「3DEXPERIENCE FORUM JAPAN 2017」を開催。ブリヂストン 執行役員でCDO(チーフデジタルオフィサー)の三枝幸夫氏が「デジタルトランスフォーメーションで加速するブリヂストンのビジネスソリューション」をテーマに特別講演を行った。
グローバルタイヤメーカーであるブリヂストンは、乗用車向けやトラック向け、建設・鉱山車両向けなど、さまざまな車両用のタイヤの製造販売を行い、売上高の80%以上をタイヤで稼ぎ出している。
しかし、最近はタイヤを中心としたビジネスモデルに陰りが見え始めたという。三枝氏は「2005年は当社とミシュラン、グッドイヤーのビッグ3がタイヤ市場の半分以上のシェアを占めていた。しかし2015年には、トップ3を維持してはいるものの、合計シェアは38%にとどまり、新興国メーカーにシェアを食われる構造となっている」と市場構造の変化について述べる。
こうした状況を受け「良いタイヤを効率よく作り、それを高く売って利ざやでもうけるというビジネスモデルに限界を感じ始めた。そこで製造販売業からソリューションプロバイダーへと大きく舵を切ることを決めた。タイヤを売らずに稼ぐビジネスモデルへの転換だ」と三枝氏は語る。
その1つの例が、運送ソリューションである。これは運送会社に対し、タイヤを販売するのではなく、タイヤを「貸す」というビジネスモデルである。ブリヂストンが「常に安定したタイヤ環境」をサービスとして提供することで、ローテーションや空気圧などの管理を顧客が行わなくてすむようになる。メンテナンス作業全てをブリヂストンが行うため、顧客はメンテナンスや在庫の心配なども不要となる。
「タイヤを貸すビジネスモデルへの転換で、顧客はスノータイヤへの対応など、タイヤのことを考える必要はなくなる。一方でタイヤを使った分の利用料をブリヂストンがもらう。しかし、これらを実現するにはデジタル化された情報基盤が必要になる」と三枝氏はデジタル基盤の重要性について語る。
従来のブリヂストンは個々の工程やビジネス機能ごとのIT活用は進めていたが、基本的にはバリューチェーンが分断された状況で、その間の情報のやりとりは人手による入力や、紙での受け渡しなど「綱渡りに近い状況だった」(三枝氏)。しかし、ビジネスモデルのソリューションサービス化を実現するには、あらゆる工程やビジネス機能を連携させ、総合的なサービスを提供できるようにならなければならない。「バリューチェーン全体のフルサービスが必要となることが明らかになり、デジタルトランスフォーメーションを進めていくことを決めた」と三枝氏は述べる。
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