島津製作所、神戸医療産業都市推進機構、東京エレクトロンは、細胞を壊さずに細胞の分化状態を判断できる手法を見出した。細胞の品質をリアルタイムかつ非侵襲的に、容易に管理できることから、安全で有効な細胞治療につながることが期待される。
島津製作所は2019年7月1日、神戸医療産業都市推進機構、東京エレクトロンと共同で、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)とES細胞(胚性幹細胞)を壊すことなく、細胞の分化状態を判断できる手法を発見したと発表した。
三者による研究グループは、島津製作所の超高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8050」を使用し、iPS細胞、ES細胞について、特定の細胞に変化していない「未分化」状態と、さまざまな細胞や組織への「分化」が始まった状態の培養培地を経時的に分析した。
分析の結果、細胞が未分化の状態では、培養液中にキヌレニンが分泌されていること、分化開始時には2-アミノアジピン酸が分泌されることが明らかになった。
分化の作用機序としては、未分化細胞ではトリプトファンからキヌレニンを作り、キヌレニンが芳香族炭化水素受容体AhRと結合することにより、細胞核へ移行し未分化維持遺伝子の発現を誘導する。一方、分化刺激を受けた細胞は、キヌレニンを分解して分解経路の最終産物である2-アミノアジピン酸を細胞外に排出する。
細胞の未分化および分化状態、それぞれの指標を得られたことで、細胞を壊すことなく、培養液の分析のみで分化状態を判断できる。
今回の研究成果は、細胞の品質をリアルタイムかつ非侵襲的に、容易に管理する手法として活用できる。今後、iPS細胞やES細胞を用いた、安全で有効な細胞治療につながることが期待される。
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