ET & IoT Technology 2018 特集

ET展で組み込みAIはなぜ盛り上がらないのかET2018獣道レポート(3/3 ページ)

» 2018年12月05日 10時00分 公開
[大原雄介MONOist]
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【朗報】次世代Arduino採用の「NINA-W102」、日本の技適を通っていた

 ここでいきなり展示と全く関係ない話を。2018年5月17日、Arduino.ccは次世代のArduinoとして「Arduino Uno WiFi Rev2」と「Arduino MKR Vidor 4000」という2つの製品をリリースした

 Arduino Uno WiFi Rev2の方は、MCUを「ATmega4809」(プロセッサの性能は「ATmega3208」と同じだが、フラッシュメモリが32KB→48KB、SRAMが4KB→6KBになった他、UARTやPWM、Timer、ADC入力などがそれぞれ増強されるなどしている)に置き換え、Wi-Fiモジュールとしてu-bloxの「NINA-W102」を搭載している製品だ。まぁ、既存の「Arduino Uno WiFi」の正常進化版といったところだ。

 一方、Arduino MKR Vidor 4000の方は、Microchipの「SAMD21」に加えてIntelの「Cyclone 10 CL016」(16KのLogic Elementと504KBのEmbedded RAMを内蔵)、それとNINA-W102を搭載した、FPGA搭載Arduinoである。このFPGAの扱いについては結構Arduino.ccの側で作業を行っており、今後は更に発展させて行くという、Arduino.ccの中でも力の入ったプロジェクトになっている。

 にもかかわらず、日本でほとんど評判にならないのはなぜか、というとNINA-W102が技適を通ってないために利用できない、という非常に悲しい理由である。実際、NINA-W102のデータシートを見ると、現在審議中となっている(Photo24)。

Photo24 (Photo24)ちなみにこのデータシートは2018年6月5日付のR03のもの(クリックで拡大)

 ということで、会場でちょうどu-bloxがブースを構えているのを発見したので(ちなみに同社ブースはGNSSソリューションを中心に展示されていた)、展示物を無視していきなり「NINA-W102っていつ技適取得されるんでしょう?」と直撃してみた。すると、2018年10月の時点で既に技適が取得されている事が判明! ただしそれがドキュメントや製品に反映されるまでにはもう数カ月掛かるとのこと。実際に技適の証明番号が判明するのは2019年以降に持ち越しになりそうである。ただし、これが明確になれば、堂々とMKR Vidor 4000を国内で使うことができるようになるわけで、もう少しの辛抱である。あと、いきなり展示と関係ない質問して時間取らせて申し訳ありません>u-blox様

毛細血管を撮影できると何が分かる?

 ちょっと興味をひかれた展示は「スタートアップ&グローバルパビリオン」に出展されていた「あっと株式会社」。同社は「血管美人」という毛細血管スコープと、そのデータを分析する「CAS」(Capillary Analysis System)というソフトウェアを展示していた(Photo25)。

Photo25 (Photo25)手前のモニターに映っているのが筆者の毛細血管。「短いですねぇ」「短いと短命とか?」「いやそういうわけではありません(笑)」(クリックで拡大)

 要するに毛細血管を簡単に撮影できるスコープと、このスコープで撮影した画像から毛細血管の状態の数値化が可能なソリューションを提供している形だ。このソリューションは大阪大学との共同研究の成果ではあるが、ではその数値化した結果から何が分かるのか、という話は今まさにエビデンスを大阪大学が収集している段階ということで、端的に言えば実は毛細血管の数値を取得しても、それが何の役にもたたないという可能性もある。要するに、これから診断手法を確立してゆきたい、という段階のものでしかない。

 普通に考えたら、こうした最先端のものはリスクも高いだけに、ベンチャー(会社概要によれば2017年時点での社員は4人だそうで、まぁベンチャーとしても差し支えはないだろう)企業にはハードルが高い気もする。しかし、逆に大手の医療機器ベンダーはもっと確実な分野での製品投入を望むだろうから、こうした最先端の分野にはあまり手を出さない気もする。筆者はこの分野での知見が無いので、これがどの程度有望なのかは判断が付かないのだが、こうしたチャレンジは応援したいところである。

ところで、ネームタグのビーコンはどうなった

 ET2018の入場者証のネームタグは電波を発信するビーコンのようなシステムだったらしい(Photo26)のだが、会場入り口にはこんな掲示が(Photo27)。ナビゲーションサービスはこれの模様であるが、えーと、何があったんでしょう?

Photo26Photo27 (左、Photo26)分解してないので断言はできないが、ボタン電池+RF回路のような構成のもよう。裏側には技適マークもあった。(右、Photo27)ちなみに初日の午前10時(つまり会場がオープンした時間)に既にこの掲示があったので、前日までのリハーサルで何か不都合が判明したらしい(クリックで拡大)
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