ソシオネクストは、それなりに大きなブースを構えてさまざまなソリューションを展示していたが、筆者が注目したのは2018年10月に発表された8Kの映像処理チップである「SC1H05AT1」(Photo19)。いや、このSC1H05AT1そのものは既に「CEATEC JAPAN 2018」で展示されており、別に珍しくないのだが、ちょっと面白い話を聞いたのでご紹介まで。
今のところSC1H05AT1は世界で唯一、HDMI 2.1に対応したチップである。HDMI 2.1そのものは2017年に規格制定されているのだが、同じく4K/8Kを目指したDisplayPort 1.4は既に幾つか対応チップが存在するのに、なぜHDMI 2.1はソシオネクストしか製品が存在しないのか? という素朴な疑問があったためだ。
話をうかがったところ、一応他社も開発中ではあるとのこと。ただ、相互接続試験を行ったところ「EYEが開かなかった」(信号の乱れを補正しきれず、データアイが開かなかったため信号伝達できなかった)そうだ。ちなみに、ケーブルメーカーとの相互接続試験も行ったそうで、こちらはちゃんと動作したとか。というのは、例えば銅ケーブルを折り曲げたりすると当然伝達特性が変わるわけだが、SC1H05AT1は常時伝達特性を監視して、変化があった場合にはそれにあわせてフィルターのパラメータを変えるなどの対策を動的に取ることで、安定した伝達特性が保証できるという話であった。
技術的に言えばDisplay Port 1.4は8.1Gbps×4レーン、対してHDMI 2.1は12Gbps×4レーンということで両者の間には10Gbpsの壁がある。その壁は予想以上に高くてなかなか参入が困難であり、しかしソシオネクストはその壁を無事超えられた、ということになる。こういう話を聞けるのはET2018のような展示会ならではだろう。
Intelのブースにて。ちょうどFPGAの「Arria 10」と「Stratix 10」を使ってマンデルブロ図形の描画をする、というデモを行っていた(Photo20)のだが、そのStratix 10の開発キットには、簡易水冷キット(!)が(Photo21)。
で、写真を撮影しまくっていたら、Intelの広報某氏がすっ飛んできて「これ(Stratix 10)はサーバ向けのものなので、フルに動かすと消費電力がそれなりに」。ええ、分かります。が、組み込み向けで簡易水冷は普段なかなかお目に掛かることがない(システムとして水冷が無いわけではないが、簡易水冷だと連続稼働が厳しいので、もう少し本格的なものになる)ので、ちょっと取り上げてみた。
2017年に、こちらの記事でも触れさせていただいたが、2017年の「組み込みAI活用ゾーン」はいろいろと惨敗だったとして良いと思う。で、2018年はどうなったか? というと、「エッジAIゾーン」というエリアがあり、半分はLeapMindが占めていた(Photo22)。
これはまぁよしとして、問題は残り半分。単にNVIDIAの「Jetson Xavier」を扱っている4社(マクニカ、オプティム、クロスコンパス、キヤノン)が、Jetson Xavierベースのデモを行っている(プラス、一応即売もしていた)だけで、「以上、終わり」である(Photo23)。
何というか、内容は伴っていなかったとはいえ、それなりのメーカーの出展を期待してブース面積を確保した2017年からだいぶ後退している気がしなくもない。厳密に言えば、他に「組み込みAI活用ゾーン」と「エッジコンピューティングゾーン」というエリアも存在したのだが、前者はAIと銘打ちつつもあまりAIに関係ない展示が多かったし、後者はAIと無関係なものの方が多かった。2017年の記事では、「2018年のET展には、集めたデータの分析ソリューションが出てきて」などと予測したのだが、残念ながら2017年からあまり進歩していない、というのが2018年の偽らざる実感であったのは残念である。
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