では、会社内においてどのような単位で業務の見直しを行うのがよいのだろうか。3年前と比べて労働生産性の向上を実感している割合が最も高いのは、「全社単位で業務の見直しを行っている」企業である。一方で「特段、業務の見直しは行っていない」企業においては、労働生産性が向上したという実感があまり見られないうえ、生産性が低下したと回答した割合が最も高くなっている(図12)。これらの結果から、業務の見直しは個々の従業員のレベルで行うよりも全社単位などのより大きな規模で行うことで効果が上がるものと思われる。
従業員規模別に業務見直しの取り組み単位を見てみると、従業員規模が大きくなるほど、「全社単位で業務の見直しを行っている」と回答した企業の割合が高くなる傾向にある。一方で、企業の規模が小さくなるほど、「個々の従業員のレベルで、日々工夫しながら、業務の見直しを行っている」「特段、業務の見直しは行っていない」と回答している企業の割合が高くなっている(図13)。
中小企業における業務見直しの取り組み有無別に、設備投資(新規投資、増産投資および省力化投資)、IT導入、多能工化、兼任化およびアウトソーシングの実施率を見ると、いずれの取り組みについても、業務見直しを実施している企業の方が他の取り組みも実施率が高くなっている(図14)。業務見直しを行っている企業は他の取り組みにも積極的であり、また他の取り組みを推進する前提として業務見直しを行っていることが推察される。
他の生産性向上策を実施した企業について、業務見直しの実施有無別に労働生産性が向上したと回答した企業の比率を確認すると、いずれの取り組みについても、業務見直しと並行して取り組みを実施している企業の方が、単一の取り組みのみを実施している企業に比べて、労働生産性が向上した企業の比率が高くなっている(図15)。さまざまな取り組みによって労働生産性を向上させていく上では、まず業務見直しを行うことが成功のカギといえるだろう。
本稿では、中小製造業の人手不足の現状を明らかにするとともに、業務プロセス改善による生産性向上のために必要な条件や実感値などについて掘り下げた。次回は、ITの利活用などによる労働生産性の向上について取り上げたい。
長島清香(ながしま さやか)
編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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