中小企業の現状を示す「2018年版中小企業白書」が公開された。本連載では「中小製造業の生産性革命は、深刻化する人手不足の突破口になり得るか」をテーマとし、中小製造業の労働生産性向上に向けた取り組みを3回に分けて紹介する。第1回は現在の状況と業務プロセス改善への取り組みについて解説する。
経済産業省 中小企業庁は2018年4月に「2018年版中小企業白書(以下、中小企業白書2018)」を公表した。本稿では「中小製造業の生産性革命は、深刻化する人手不足の突破口になり得るか」をテーマとし、中小企業白書2018をもとに中小製造業が労働生産性の向上に向けて取り組んでいる施策とその効果などを3回に分けて考察する。
第1回の「中小製造業における業務プロセス改善の効果と成功のカギ」では、中小製造業の人手不足の現状を明らかにするとともに、業務プロセス改善による生産性向上の効果や、成功のために必要な環境などについて掘り下げる。
なお、この報告の中で「中小企業」とは、中小企業基本法第2条第1項の規定に基づく「中小企業者」を指す。製造業については「資本金が3億円以下であること」「常時雇用する従業員が300人以下であること」のいずれかの条件を満たすことが求められる(ただし、ゴム製品製造業については資本金が3億円以下、または常時雇用する従業員が900人以下であることが条件)。そのうち、常時雇用する従業員が20人以下の場合は「小規模企業者」に区分される。
まず初めに、中小製造業における人手不足感について確認したい。従業員の状況について、今期、従業員が「過剰」と答えた企業の割合から、「不足」と答えた企業の割合を引いた「従業員数過不足DI」は、製造業を含め全ての業種において2009年をピークにマイナスに転じ、2013年第4四半期以降は全ての業種においてマイナスになっていることが分かる。特に建設業やサービス業といった業種において人手不足感が顕著だが、製造業も2017年の第3四半期以降からは、より人手不足感が強まっていることが分かる(図1)。
さらに、中小企業の経営上の問題点について「求人難」を挙げた企業の割合が2010年以降に右肩上がりで増加していることから、中小企業における人手不足が経営上の課題としても強く認識されていることが見て取れる(図2)。
これら中小企業における人手不足感の高まりの背景にはいくつかの要因が考えられるが、少子高齢化が叫ばれて久しい日本の生産年齢人口(15歳以上65歳未満)と労働力人口の変化を見てみたい。
日本の生産年齢人口は、1995年の約8700万人をピークに減少の一途をたどっており、2015年には約7700万人まで減少している。この傾向は今後も継続すると予想されており、2060年には約4800万人と、2015年の約6割の水準まで減少すると推計されている(図3)。
また、労働力人口の変化について近年と1980年とを比較すると、44歳以下の人材の占める割合が減少していることが見て取れる。一方で、55歳以上の人材が占める割合が増加しており、中でも60歳以上の世代の増加率が特に大きいことが分かる(図4)。
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