中小製造業がIoTをバリバリ使いこなせるツール、106件が選定製造業IoT(1/2 ページ)

経済産業省およびロボット革命イニシアティブ協議会は2016年7月27〜8月26日にかけて募集していた「中堅・中小製造業向けIoTツール募集イベント」の結果を発表。106件のツールを認定し「スマートものづくり応援ツール」として展開を進めていく。

» 2016年10月05日 07時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 経済産業省およびロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)は2016年10月4日、2016年7月27〜8月26日にかけて募集していた「中堅・中小製造業向けIoTツール募集イベント」の結果を発表。106件のツールを認定し「スマートものづくり応援ツール」として展開を進めていく。

「スマートものづくり応援ツール」の選定

 中小企業がIoT化に踏み切れない理由として、企業規模として財務力に制約がある点や、具体的にIoTで何をやるべきなのか分からない点、これらを実現するのに必要な人材がいないという点などがある。こうした課題に対応するため、RRIでは「WG1:IoTによるビジネス変革WG」において、2016年7月27日〜8月26日にかけて中小製造業がより簡単に、低コストで使える既存のアプリケーションやセンサーモジュールなどのツール(新規開発も含む)を全国から募集した。

 その結果として、応募ツールの中から中小製造業経営者を中心とする審査委員会を踏まえ、106件のツールを「スマートものづくり応援ツール※)」として取りまとめた。ツールは以下の7つのユースケースに合わせてとりまとめられている。

※)紹介ページ:「スマートものづくり応援ツール(PDF)

  1. 生産現場における課題を解決するためのツール
  2. 工場や企業の外と情報をやりとりする際の課題を解決するためのツール
  3. 事務における課題解決ツール
  4. グローバル化に伴い海外で展開するために役立つツール
  5. 自社製品をIoT化するためのツール
  6. データの活用全般に関わるツール
  7. 人材育成の観点で活用できるツール

 2015年度にはRRIの「IoTによるビジネス変革WG」において、「中堅・中小企業サブ幹事会」の主査を努め、今回のツール審査の審査委員長を担った法政大学大学院 松島桂樹氏は「100件を超える応募があったことは、IoTツールへの関心の高さを示したといえる。特に約4割の応募が東京や大阪以外の地域だったことは地方のITベンチャーなどの活躍を感じさせた。しかし、応募作品全てが中小企業にすぐに役立つものではなく、多額な設備投資が必要な大規模ツールもあった。多様なツールを中小企業と支援者が品定めする評価力が重要である」と述べている。

実際に中小製造業が選んだという点がポイント

 今回のツール選定については、応募ツールの内で、中小製造業が容易に導入できるという趣旨に反しないものを選んだものである。中小企業向けといっても実際には、中小企業にとっては導入が難しいツールも数多く存在するが、今回の選定には、中小製造業である錦正工業の代表取締役社長 永森久之氏、今野製作所の代表取締役社長 今野浩好氏、浜野製作所 代表取締役社長 浜野慶一氏、武州工業 代表取締役 林英夫氏が参加し、「実質的に中小製造業でも使える」ものを選定したことがポイントである。

 錦正工業の永森氏は講評として「大手ベンダーの有名なツールだけでなく、無名でも面白いアイデアツールも多く、知らないことがまだまだたくさんあると感じた。ただ、全体的にはまだまだ高価で、中小企業にとってはハードルが高い印象。その中で、ITベンダーではなく中小モノづくり企業からの提案がひときわ目を引いた」と述べている。浜野製作所の浜野氏も「非常に興味ある取り組みでワクワクした。実際に、試したいツールがいくつもあった」としている。

 一方、今野製作所の今野氏は「面白いツールが多く、試してみたいものがいくつかあった。しかし、現時点で中小企業がすぐ使えるかどうかという点では、疑問符がつくものが多い。中小企業側の潜在ニーズと、ツール提供者側の技術シーズの出会いの場が作れれば、一気にコトが進むと思った」と述べている。また、武州工業の林氏も「まだ、中小企業のことが分かっていないベンダーが多いと感じた。価格が高いと使えず、特定業界向けは高価なものになりがち。汎用的なものをうまく使いこなしたい。クラウドなど最新技術を駆使して中小企業のニーズに応えられるツールが待ち望まれている」と要望を述べている。

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