3Dプリントにおいては作業に応じて複数のソフトウェアが存在するが、それらの機能を統合したソフトウェアも、各装置メーカーにおいてみられた。
SLM社が開発する3Dプリント統合準備ソフトウェア「Additive.Designer」は、CADデータを直接読み込むことで造形精度を上げる他、データ準備から製造関連までの全ての工程を統合している。ソフトウェアのリリースはドイツのフランクフルトで2018年11月13日から開催される技術展示会「formnext 2018」に合わせて行うという。「造形スピード、品質管理、物理的な強度などを統合して正確に調整することが可能になった。これによりアンダーカットが20度までサポートなしといったことも実現できる」(愛知産業)。(関連記事:CADデータをそのまま金属3Dプリンタに――SLMの最新技術はソフトが肝)
3D Systemsの「3DXpert」は、3D Systemsの金属3Dプリンタのために開発されたオールインワンのソフトウェア。同社のCAD/CAMシステム「Cimatran」がベースとなっている。ラティス構造の最適化やサポートの設計から、造形シミュレーション、パス設定、プラットフォームへの複数部品の配置、造形後の表面部の切削や穴開けなどの加工設計までが可能。基本的にSTLに変換することなく3Dプリントの準備ができる。
Desktop MetalのStudioシステムも、専用の「StudioSystemクラウドソフトウェア」を使用して造形から焼結までの一括管理を行う。クラウドベースのため、造形方向やサポートの自動設計などの最適化条件が常に更新されるのが特徴だという。「オプションでローカルも選択できるが、クラウドのメリットもあるので活用してほしい」(丸紅情報システムズ)。一連の工程に掛かる時間や材料使用量なども造形前に見積もることができる。また脱脂や焼結条件も自動で設定されるため、ユーザーはそれらの進行をチェックするといった手間を省けるという。
金属3Dプリンタの用途については、海外ではコストメリットの大きい航空宇宙分野の部品への適用例が頻繁に取り上げられるが、国内では自動車や電機製品の金型および最終製品の事例が多いように感じられた。
金属の積層造形技術の重要性が高まる一方で、装置は高価であり、材料の知識を持ち、多くのパラメータを制御することが求められるなど難易度が高いとされる。ただ「最近は金属プリントの需要が伸びている。ここ5年で使えるという感じになってきた」というサービスビューロの声もある。
一方、世界で販売台数が急増すると予想されるものの、日本では世界に比べて伸びが遅く、使いこなしの面で遅れているという指摘もある。装置メーカーやサービスビューロから聞かれたのが「日本では設計者自身がまだ3Dプリントに適した設計に慣れていない」という言葉だ。積層造形用として図面を受け取ったものの、従来の方法で加工した方がよいといったこともあるという。その理由について「設計者は今ある機械で加工できる図面を作れと言われながら一人前になっていく。だからどうしてもその枠を抜け出しにくいのでは」という。
3Dプリンタはカスタマイズ化、少量多品種といった要求に応えることができ、IoTやインダストリー4.0と親和性の高い製造装置となる。中でも積層造形の最大の価値は、今までになかった形状を作れることにあると考えられる。装置の性能を十分に引き出してすためには、直接3Dプリンタに触れながら経験を積み重ねていくことが重要だと考えられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.