コックピットの進化に向けて、ハイパーバイザーを用いた仮想化により複数のHMIを統合制御するデモンストレーションを各社が「CES 2018」で披露した。
メータークラスタやカーナビゲーションシステム、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、電子ミラーといった複数のHMI(ヒューマンマシンインタフェース)の搭載が増えている。これらのHMIは、これまで部品ごとに個別のプロセッサで動作しており、表示を複雑に協調させるのは難しかった。
コックピットの進化に向けて、ハイパーバイザーを用いた仮想化により複数のHMIを統合制御するデモンストレーションを各社が消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2018」(2018年1月9〜1月12日、米国ネバダ州ラスベガス)で披露した。
「世界初の量産可能な車載ハイパーバイザー」と題した展示で、量産車での採用を2019年と宣言したのはデンソーだ。ハイパーバイザー技術は、OSの容易なアップグレードやバージョンアップ、開発資産のソフトウェアの転用、ハードウェアの統一によるコストダウンなどさまざまなメリットが見込めるとしている。
1つのSoC上において、HUDとメーターをQNXのリアルタイムOS(RTOS)で、車載情報機器は車載Linux「Automotive Grade Linux(AGL)」で制御した。デモンストレーションでは、実際のHMIの代わりに3枚のフルHDタッチパネルを用いた。SoCはクアッドコアCPUと第9世代GPUを組み合わせたインテルの「Atom」プロセッサ「A3900シリーズ(開発コード名:Apollo Lake)」で、QNXのハイパーバイザー技術を使用した。
デモンストレーションでは、OSの独立化をオン/オフしたりいずれかのOSをリセットしたりするスイッチを設け、ハイパーバイザーによってそれぞれのOSが独立し、AGLが無反応か、リセットされた状態でもRTOSがメーターやHUDの表示を維持する様子を紹介した。
ルネサス エレクトロニクスは、米国の組み込みソフトウェアベンダー、Green Hills Softwareの仮想化技術を用いたコックピットを、クラウドサービスによってパーソナライズする作業を実演した。事前にクラウドサービスに登録した顔写真によって個人の認証を行う。認証されると、顔情報と併せて登録したメーターのデザインや好みの音楽、ルート案内の目的地が設定された状態となった。
パーソナライズ対応のコックピットを採用したChrysler(クライスラー)の「ダッジラム1500トラック」には、ルネサスの車載SoC「R-Car H3」を搭載している。Green Hills SoftwareのRTOS「INTEGRITY」と、仮想化機能によって分離したAndroid 8.0 Oreoを動作させた。電子ルームミラーは車載Linuxだという。
仮想化によって、アップデートでOSを書き換える範囲を切り分けられる構造とするとともに、パートナー企業と協力してコックピットシステムに要求されるOSをカバーした点をアピールした。
レベル2から完全自動運転までカバーするコックピットを提案するパナソニックも、2016年7月に買収したドイツの車載ソフトウェア開発会社OpenSynergyの仮想化技術を活用する。視覚情報による運転支援や自動運転中のエンターテインメント向けに複数のディスプレイを採用するためだ。
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