コモディティ化と、製品にサービスを付加する難しさを家電で経験してきたパナソニック。家電が通ったこれらの問題は、今後自動車にも起こり得る。自動車部品メーカーとして世界トップ10入りを目指す同社は情報化が進む自動車に対し、何を提案していくのか。
コモディティ化と、製品にサービスを付加する難しさを家電で経験してきたパナソニック。家電が通ったこれらの問題は、今後自動車にも起こり得る。
例えばトヨタ自動車は、電気自動車にブランドの個性を持たせる難しさを課題と捉え、他社とも協力しながら自動車をコモディティにさせない開発に取り組む。また、自動車を所有せずサービスと利用する使い方「MaaS(Mobility-as-a-Service)」に向けた技術開発も各社が行う。
パナソニックは自動車部品メーカーとして世界トップ10入りを目指し、車載事業の売上高は2018年度に2兆円、2021年度に2兆5000億円を目標とする。情報化が進む自動車に対し、何を提案していくのか。
2018年度に目指す売上高2兆円のうち、3分の1を占めるのはデジタルAV機器の技術を応用した快適分野だ。中でもコックピットシステムでは、複数のディスプレイのスムーズな連携や、快適さを追求した操作系を強みとする。また、空調や照明、音響システムなど住空間に関するビジネスで培ったノウハウを応用して、完全自動運転中にも快適に過ごせる車内空間づくりにも取り組む。
消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2018」(2018年1月9〜12日、米国ネバダ州ラスベガス)では、自動運転のレベルに合わせて求められる機能を搭載したコックピットを披露した。ドライバーが周辺を常に監視する必要があるレベル2に向けては、4つのディスプレイを連携させ、視覚情報による運転支援を行う。
ドライバーが周辺監視や運転操作を行わない場面も出てくるレベル3の自動運転車には、レベル2と同様の視覚情報による運転支援に加えて、ドライバーモニタリングシステムを提案する。カメラによる眠気検知の他、ステアリングを握る握力を基にした運転への集中度推定や、人体からの放熱量を計測して覚醒度を維持する機能など複数の手段でドライバーの状態監視や注意喚起を実現する。
こうしたコックピットシステムを実際の車両に展開するための技術もそろえる。車載情報機器のOSとしてAndroidや車載Linuxである「Automotive Grade Linux(AGL)」の対応を進めており、AGLを採用したインフォテインメントシステムがトヨタ自動車の「カムリ」に搭載済みで、Androidを採用したシステムはホンダ「アコード」の新モデルに搭載される予定だ。
インフォテインメントシステムと、機能安全が要求されるメータークラスタの表示を1つのSoC(System on Chip)で制御する上では、2016年7月に買収したドイツの車載ソフトウェア開発会社OpenSynergyの仮想化技術も活用している。
レベル2の自動運転から完全自動運転までカバーするコックピットをシステムとしてそろえた上で、MaaSの「サービス」の部分にはどう取り組むのか。パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 副社長でインフォテインメントシステム事業部長の上原宏敏氏は「個人的にはパナソニックとして深入りする必要はないと思っている」と語った。
「テレビをインターネットにつなげてサービスを提供しようと検討したが、一筋縄ではいかない分野だ。われわれが強みを出せるところに取り組めばいい。サービスを提供する企業は地域ごとに強い会社があるが、サービスの提供元が変わっても動けるものをつくれればよい」(上原氏)とする。コックピットシステムの技術は、所有するクルマにも、サービスとして使われる車両にも共通して必要になる。また、モビリティのサービス化で生まれるニーズをパナソニックとして探っていき、トヨタ自動車を始めとする取引先の取り組みに貢献できるよう準備する考えだ。
上原氏は、コモディティ化について「価格にしか価値がなくなること」と定義した上で、電気自動車がコモディティになるには時間がかかるとコメントした。「多少の不具合があっても我慢してもらえる家電に対し、クルマは品質や安全性に価値が求められる。製品としての売り方もクルマと家電は違う。サービスに比重が移るまでは、自動車は製品の価値を伝えて売っていくビジネスモデルだ」(上原氏)。
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