リードタイムを半減、AR活用なども視野に入れる日立大みか工場の進化 : メイドインジャパンの現場力(13) (3/3 ページ)
さらに、これらで得られたデータから、人手によるセル生産ながら、作業時間の見える化や、能力の標準化などが実現可能であるために、生産リソースの最適配置が可能となる。その1つが「工場シミュレーター」である。「工場シミュレーター」は、設計から調達、製造、検査、出荷までの生産プロセス全体を対象に、製品の仕様や納期、生産能力などを考慮した中長期の生産計画を自動で立案するもの。これにより、納期や受注量の変更に対し柔軟に生産計画を再立案し、正しい納期の見通しを立てやすくする。一般的な生産スケジューラーでは、部品が決まり部品構成表(BOM)がそろって初めてスケジュールを組むことができるが「工場シミュレーター」は詳細な部品が決まる前に大体の計画が立てられるという点が特徴である。
さらに、大みか事業所では多品種少量生産が進んでいるため、1つの作業ラインや1人の担当者が1日に複数の種類の製品を取り扱うケースがあるが、この状況では作業の進捗度が見えにくく、作業負荷がどの作業ラインに強くかかっており、余剰人員をどこに振り向けるべきかという判断が難しい。これらを解消するために開発したのが「進捗・稼働監視システム」である。「進捗・稼働監視システム」は、生産計画と作業実績のデータをデータベースに収集して一元化、時間と作業工程を軸にした棒グラフで可視化する。それにより、工程の遅延やボトルネックになっている作業、作業能力(人員)の過不足など、現場リーダーが一目で把握できるようになるというものだ。複数製品の混流生産となっていても、実際に納期に遅れが出る前に対処できるようになる。
「工場シミュレーター」のイメージ画面(左)と「進捗・稼働監視システム」のイメージ画面(右)(クリックで拡大)出典:日立製作所
これらの取り組みにより、大みか事業所では2015年度比で設計から生産までの全体リードタイムを2分の1にすることができたという。内訳としては設計工程で2割、調達工程で2割、生産工程で1割の削減だとしている。
今後に向けては、3DCADデータを使ったARの活用なども検討中だとしている。さらに「今さまざまな形で実証を進めているのが、画像センサーとAIの組み合わせである。AIとARを現場でどう活用すれば効果的かというのを検証している」と小林氏は述べている。
さらに小林氏は「大みか事業所はシステム生産工場から顧客価値創造工場へと進化しようとしている。また、その中では『Lumada』の実証の場としての役割も担っており、先進技術を取り入れて新たな価値創出に積極的に取り組んでいくつもりだ」と今後の取り組みについて述べている。
日立製作所 大みか事業所の生産改革と先進技術の適用(クリックで拡大)出典:日立製作所
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