リードタイムを半減、AR活用なども視野に入れる日立大みか工場の進化メイドインジャパンの現場力(13)(1/3 ページ)

日立製作所グループにおいて、さまざまなインフラの制御システムを構築しているのが大みか事業所である。総合システム工場としての位置付けを担う同工場は、スマート工場化の実証なども推進し、リードタイム半減に成功。さらにITシステムの高度化やAI活用などで進化を進めようとしている。

» 2018年01月09日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 日立製作所グループにおいて、さまざまな重要インフラの制御システム関連機器の製造やシステム構築を実現しているのが、大みか事業所である。同工場はスマート工場化プロジェクトを推進し、人、モノ、設備の情報を循環させる高効率生産モデルを確立。制御機器の主力製品の総合的なリードタイムを50%短縮することに成功した。さらに同事業所ではARなども活用する新たな進化に取り組んでいる。

photo 日立製作所 大みか事業所の制御装置生産ライン 出典:日立製作所

日立における「制御」の中心地「大みか事業所」

 大みか事業所は、電力や鉄道、鉄鋼、上下水道などの重要インフラにおける「制御」領域を担ってきたOT(制御技術)を中心とした拠点だ。もともと大みか事業所は、1969年に日立工場と国分工場の制御部門が集まって創立された制御に特化した事業所である。その後、日立における総合システム工場として重要インフラを支えるシステム基盤の提供を行ってきた。例えば、大きなものとして鉄道の運行システムなどがある。その他、鉄鋼工場のシステムやスマートグリッド実証など、国内外で多くの導入実績を持ち、高信頼化技術など、制御に対するノウハウや知見を蓄積してきた。

photo 日立製作所の大みか事業所の外観 出典:日立製作所

 大みか事業所の特徴が、個々のプロダクトからシステムまでを一貫して作り上げて導入できるという点である。ハードウェアの製造なども行っているが、基本的にカスタム製品となるので、多品種少量生産が求められてきた。そのため、生産効率を高めるための生産革新活動を以前から推進。日立グループの構造改革「Hitachi Smart Transformation Project(スマトラプロジェクト)」の一環として、約8万個のRFIDタグを活用し、工程の見える化によるムダを排除する「RFID生産監視システム」などを導入している。さらに、個別受注生産比率を縮小し、個別設計を減らして設計・調達工程での生産リードタイムの短縮を図る「モジュラー設計システム」なども新たに活用するなど、多彩な生産効率改善への取り組みを進めている。

photo 日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部 大みか事業所長の小林毅氏

 これらの取り組みをさらに発展させる形で、2015年からIoT(モノのインターネット)を活用した工場の生産活動とサプライチェーンのデジタル化へと取り組みを開始した。その一環として「作業改善支援システム」と「工場シミュレーター」を導入し、これらと従来も取り組んできた「RFID生産監視システム」と「モジュラー設計システム」を併せた4つのシステムを連携させることで、人、モノ、設備の情報を循環させる高効率生産モデルを確立。その後、これらの確立されたシステムを日立製作所グループで展開するIoT基盤「Lumada」のソリューションコア(抽象化した“ひな型”)として、展開し外部提供などを進めている(※)

(※)関連記事:高効率な個別大量生産に対応する日立大みかのノウハウ、IoTプラットフォームから提供

 日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット 制御プラットフォーム統括本部 大みか事業所長の小林毅氏は「日立のスマート工場化は現場発であることが特徴だ。多品種少量生産に適したモデルが提供できる」と述べている。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.