図研のユーザーイベント「Zuken Innovation World 2017 Yokohama」の講演に、同社取締役 オートモーティブ&マシナリー事業部長の早乙女幸一氏が登壇。ワイヤハーネス回路設計ツール「E3」と「Cabling Designer」について、2019年度をめどに統合する方針を明らかにした。
図研は、横浜市内において、ユーザーイベント「Zuken Innovation World 2017 Yokohama」(2017年10月18〜19日)を開催。初日の10月18日には、図研 取締役 オートモーティブ&マシナリー事業部長の早乙女幸一氏が「図研オートモーティブ&マシナリーのビジョンとロードマップ」と題した講演を行い、同社が展開するワイヤハーネス回路設計ツール「E3シリーズ」と「Cabling Designerシリーズ」について、2019年度をめどに統合する方針を明らかにした。
E3は、2006年に図研が買収したCIM-TEAMの製品で、機械設備など産業機器市場を中心に欧州や米国で広く採用されている。一方、Cabling Designerは、自動車など輸送機器に特化する形で日本やアジアで採用実績を積み上げてきた。ワイヤハーネス回路設計ツールのグローバル市場でみても、産業機器向け、輸送機器向けともに図研は優位なポジションを築いており、競合ベンダーのメンター・グラフィックス(Mentor Graphics)と市場を二分している。
今回の統合では、E3とCabling Designer、双方の利点を最大化することが狙い。「継承型デザイン」「クロスプラットフォームレベル開発」「グローバル分散・協調開発」といった重点機能を含む包括的なシステムズワイヤリング設計・製造環境を「グローバルで提供するとともに、既存環境からのスムーズな移行も進める」(早乙女氏)という。
2017年時点では、車両の電気電子(E/E)アーキテクチャ設計システムである「Architecture Planner」からE3、E3からは、Cabling Designerの設計データと連携するワイヤハーネス製品図設計システム「Harness Designer」へのデータ連携が可能になっている。これらのデータ連携は、2017年10月に国内発売する電気制御・ワイヤハーネス設計データ管理ソリューション「DS-E3」が基盤となる。そして2019年に向けて、ユーザーインタフェースやライブラリの共通化も進めていく。
E3とCabling Designerの統合化の背景には、インダストリー4.0などとともに製造業への浸透が進んでいる「デジタルツイン」の存在がある。図研のドイツ法人でグローバルオートモーティブ&トランスポーテーション コンピテンスセンター ビジネスディレクターを務めるラインホルド・ブランク(Reinhold Blank)氏は「デジタルツインでは、物理的に生産するモノは必ずデジタルコピーを作る。このデジタルコピーは、単なるCADデータではなく、リアルとデジタルで完全に等価ではなくてはならない」と説明する。
その上でデジタルツインを推し進める2つのトレンドとしてMBSE(Model-Based Systems Engineering)と「100%のE/Eデータモデル」を挙げた。これらのうち、MBSEについては、PLMベンダーのアラス(Aras)やMBSEツールを手掛けるNo Magicなどと協業を進めている。そして、100%のE/Eデータモデルの実現で重要な役割を果たすのが、これまでエレクトロニクス設計データ管理ソリューションとして展開してきた「DS-2」を基に開発したDS-E3の投入と、E3とCabling Designerの統合になる。早乙女氏は「デジタルツインで重要な役割を果たすことになる100%のE/Eデータモデルを実現できるように、着実に取り組みを進めていく」と述べている。
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