障害報告が劇的に減少、図研はいかにしてソフトウェア品質を改善したのか製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

電子機器設計用ツールの大手ベンダーである図研は2015年10月16〜17日にプライベートイベント「ZUKEN Innovation World 2015」を開催。同イベントに登壇した図研 常務取締役 EDA事業部長務める仮屋和浩氏が、同社のソフトウェア開発環境や、品質向上に向けた体制変更などの取り組みについて紹介した。

» 2015年11月19日 06時00分 公開
[陰山遼将MONOist]

 電子機器設計用ツールの大手ベンダーである図研は2015年10月16〜17日にプライベートイベント「ZUKEN Innovation World 2015」を開催。同イベント登壇した図研 常務取締役 EDA事業部長務める仮屋和浩氏が、同社のソフトウェア開発環境や、品質向上に向けた体制変更などの取り組みについて紹介した。

図研 常務取締役 EDA事業部長務める仮屋和浩氏

 電気CAD「CR-8000」シリーズをはじめ、エレクトロニクス設計(EDA)に関するさまざまな産業用ソフトウェアを提供している図研。その開発環境はどのように構築しているのだろうか。仮屋氏はまず共通の開発プラットフォームを構築している点を説明。図研のソフトウェア開発拠点は、英国、ドイツ、横浜、米国など複数の国にまたがるが、これらの総勢300人以上のソフトウェア開発エンジニアが同一のプラットフォームで開発できる環境を構築しているという。

 図研ではM&Aなどで海外ベンダーなどを買収した場合も、3〜7年程度の時間をかけて同社の共通開発プラットフォームに開発環境を統合する。その理由について仮屋氏は「そこまでやる必要があるのかといわれることもある。しかしさまざまなソフトを異なるUI(ユーザーインタフェース)使うとうのはロスが多いし、それを顧客に提供するのは避けたい。図研では文化の異なる海外のソフトウェアも、時間をかけてでも必ずモジュール化して共通開発プラットフォームに融合するようにしている」と述べる。

図研のソフトウェア開発環境(クリックで拡大)出典:図研

「CR-5000」から開始した品質革新への取り組み

 仮屋氏は図研の従来のソフトウェア開発体制について「仕様を書き、内部仕様を設計し、インプリメントして各開発はデバッグを追って、最後にマスターに反映するという一般的なソフトウェア開発の流れを踏んでいた」と述べる。

 この場合、2000〜3000万行に及ぶソースコードを各開発者がローカル環境でコンパイルするのは難しいため、それぞれが開発成果をマスターに反映し終わってからまとめてコンパイルするという流れになる。

 しかし仮屋氏は「この体制だと必ずだれかがミスをするので、コンパイルを通すだけで1週間かかることも多かった。そこからさらに1次、2次、3次とチェックを重ねるため、常に開発期限に追われるような状況であり、品質の向上が難しかった。今だから話せるが、CR-5000の提供を開始した当時は、ソフトウェアの品質が満足に上がらず、多くのユーザーに迷惑を掛けてしまっていた。しかし、モノづくりの設計品質向上に向けたフロントローディングを提案している図研がこれではだめだということで、CR-5000の改良を進めていたころ、根本的に開発体制を見直した」と語る。

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