内燃機関が生き残るために、広島で研究進む「次世代燃料」エコカー技術(4/4 ページ)

» 2017年09月11日 06時00分 公開
[高根英幸MONOist]
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「SKYACTIV-D」でバイオ燃料の燃焼実験

ナンノクロロプシスから精製された燃料をマツダがスカイアクティブD(同社のディーゼルエンジン)を使って燃焼実験を行い、噴霧特性や燃焼特性などから自動車燃料としての特性を評価する。既に燃焼実験を開始しているという(クリックして拡大) 出典:広島大学

 実際に広島大学の坂本研究室でナンノクロロプシスの培養環境における実験の模様を見学させてもらった。現在は温度一定で撹拌(かくはん)し続け、リンや窒素分の割合を変えたり、CO2を与えるなどで培養状態にどう変化が起こるか観察している状態らしい。これからゲノム編集の作業を進め、培養の方法や増殖率などが改善されていくことになるようだ。

 既にナンノクロロプシスから精製したバイオ燃料の燃焼実験もマツダで行っており、それを元に太田研究室へゲノム情報をどう構成していくべきか、検討が進められているという。

こちらはCO2を注入しながら培養中。いろいろな環境で培養し、生じた変化をゲノム編集へ生かす(クリックして拡大)
顕微鏡で拡大したナンノクロロプシス。黄色い部分が油滴、油胞ともいわれる油脂を溜め込む部分(左)左から通常の環境で培養をしたもの、リン欠乏状態、窒素分欠乏状態。このようにストレスを与え、増殖や油胞の変化を調べる(右)(クリックして拡大)

 まだ2017年度での目標値は明言できないというが、第3世代のバイオ燃料は石油由来の燃料と比べ生産コストで3〜4倍といわれている現状から、大幅に改善されることを期待したい。今後はひろ自連とも連携して、開発していくことも検討されている。


 新興国の旺盛な需要により、2050年には世界の自動車保有台数は現在の2倍にまで膨れ上がると予測されている。しかし、新興国の今後の進化速度の加速ぶりまでは読み切れないのが実情だ。英国とフランスが相次いで2040年までにエンジン車の販売を禁止すると発表した。実際に時期が迫ってくるまでに、その内容は変更される可能性もあるが、むしろ世界中でEV普及の波が加速する可能性もある。

 しかもエンジンが抱えている問題はCO2排出だけではない。バイオ燃料の生産コストが下がればCO2の排出量は確実に下げられるが、その他の排ガス成分が大気汚染の原因となっていることは明らかなのだ。ここはぜひ、熱効率を高めるだけでなく本当にクリーンなエンジンを生み出すような研究開発を、ひろ自連をはじめとした自動車研究機関のエンジニアに進めてほしいと思った。

 エンジンという魅惑の機関を未来永劫(えいごう)に渡って利用し、クルマの走りを楽しむためには、EVに対して劣っている部分があることは許されない。そんな時代が絶対に到来するのだから。

筆者プロフィール

高根 英幸(たかね ひでゆき)

1965年生まれ。芝浦工業大学工学部機械工学科卒。輸入車専門誌の編集部を経て、現在はフリーランス。実際のメカいじりやレース参戦などによる経験からクルマや運転テクニックを語れる理系自動車ライター。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。



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