その次に講演したユーグレナ 社長の出雲充氏は、光合成を行う「植物」と自在に動ける「動物」という、ユーグレナが持つ微細藻類の中でも優れた特徴を紹介した。同社が試行錯誤を繰り返して安定した培養を実現する方法を見出したことにより、現在では毎日19万人がユーグレナを材料にした健康食品や化粧品を利用している。
今後、同社は燃料分野でのユーグレナの活用を見据えており、既にいすゞ自動車との共同実験でユーグレナ由来のバイオ燃料を軽油に5%混ぜたDeuSEL燃料バスを運行している他、横浜市にバイオジェット燃料精製プラントを建設し、2020年までに国産バイオジェット燃料による飛行させるプロジェクトを進めている。
最後に登壇したのは福島再生可能エネルギー研究所(FREA) 所長代理の城西欣也氏である。FREAは産業技術研究所の一部門で、風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーによる電力を蓄電池や水素に変換して貯蔵及び利用することを開発・実証している施設だ。
城西氏によれば、国内のさまざまな有機廃棄物をバイオマス発電の燃料として活用することで、日本国内でおよそ280万世帯に電力供給ができるポテンシャルがあると語る。さらに国内には未利用の木材が山林に切り捨てられたまま眠っていることから、木質バイオマスによる火力発電や液体燃料化などにより利用することで資源化できるという。特に中国地方はたたら製鉄の歴史により林業が確立していたので、バイオマス発電をするには適しているそうだ。
そして他の登壇者同様、やはり微細藻類由来の液体燃料の可能性についても触れた。注目すべきはFREAで実証実験中のトルエンを用いて水素を運ぶ水素キャリアー製造・利用技術である。これは安全かつ高効率に水素を貯蔵、運搬できる方法として、今後実用化が望まれるものだ。
シンポジウム全体として、動力の主役がEVに移行するのは相当に先のことであり、液体燃料の持つエネルギー密度の高さを生かして、バイオ燃料とエンジン改良によってCO2排出量を減らしていくことが、現実的な日本の歩むべき方向性だという考えが伝わってきた。講演者は全てがひろ自連の関係者ではないけれど、全体として一貫性があり、また同じ事象を違う角度から説明されることによって、また異なる印象から理解を深めることができた気がする。
そういった意味では、ひろ自連 顧問であるマツダ 会長の金井誠太氏による開会のあいさつに、今回のシンポジウムの全てが集約されていた感があった。この一体感こそが広島という地域の持つ特殊性なのではないか、とあらためて感じた。
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