今回開発したシステムは、デジタルカメラによる撮影までは同じだが、後は撮影画像をシステムに読み込ませるだけでひび割れの箇所を検出してくれる。CADデータ化についても、従来の手作業が不要になるので、10分の1という劇的な時間短縮が可能になる。
従来のひび割れ検出技術は、撮影画像を白黒処理してその濃淡から検出するものだった。この場合、ひび割れ以外(チョーク跡、気泡、漏水などによってぬれた部分との境界など)を検出する上、検出精度も12%と低かった。
今回開発したひび割れを検出技術は、熟練作業員による教師ありデータとなるひび割れ画像約600枚を用いたディープラーニングによって検出精度を高め、81%という精度を実現した。「ひび割れの特徴点を検出するプロセスについては、人間の知見を入れ込んでいる。これは、教師ありデータだけでのディープラーニングでは精度を62%までしか出せなかったためだ。これら全てを含めて『AIを活用した高精度システム』としている」(AIST 情報・人間工学領域 知能システム研究部門 コンピュータビジョン研究グループ 主任研究員 永見武司氏)という。
今回無料公開するシステムは、現時点でひび割れ自動検出機能を利用可能だ。今後は検出データをCADデータ化する機能も追加する予定。永見氏は「今回の無料公開はWebブラウザで利用できるようにしているので、画質次第という前提はあるがスマートフォンのカメラで撮影した画像にも適用できる。既にスマートフォンアプリも試作しているので、無料かどうかは議論することになるが公開したいと考えている」と説明する。
NEDO ロボット・AI部で今回のプロジェクトのプロジェクトマネージャーと務める安川裕介氏は「首都高速道路をはじめとするコンクリート構造物で実証実験を進めるとともに、無料公開による評価結果を反映し、2019年3月末のプロジェクト終了までにシステムの実用を開始したい。最終的には、ドローンやロボットによる撮影との連動、検出した道路構造物のひび割れの帳票化などが点検作業の効率化には必要になるだろう」と今後の展望を述べている。
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