3Dプリンティング技術を育てるために重要なこと SAoE 2017レポート(3/3 ページ)

» 2017年07月05日 10時00分 公開
[加藤まどみMONOist]
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3Dプリンティングの活性化にはユーザー交流が不可欠

 社内で装置の利用効果を最大化するためには、部門を隔てず情報を共有するためのユーザーグループが不可欠になる。また定期的な対面でのミーティングもとても重要だという。社内での風通しの良さは重要で、「社内での成功事例のシェアやコンペを積極的に行わなければ息苦しくなってしまう」(フェルドミラー氏)。

 また、外部ユーザーグループや、技術評議会への参加、交流も有効だ。「ローカルユーザーグループやスポンサードユーザーグループ、技術評議会の全ては、ネットワークづくりや知識移転のための、またとない機会」(フェルドミラー氏)。特に製造業にとっては、材料やソフト、ハード開発へ参加する機会にもなる。

教育機関と提携の背景には人材不足への危機感も

 オービタルATKは、総合大学および単科大学との共同研究や3Dプリンティング技術教育プログラムの提供、インターンシップなどを行っている。「大学や研究機関と提携する目的は、有能な人材のリクルートや、研究能力の活用にある」(フェルドミラー氏)。研究内容は装置の技術開発、基礎材料の研究や目的に応じた材料特性の設計、特性評価、また成形プロセスの科学的な理解などに取り組んでいる。また3Dプリンタの操作トレーニングにもなる。

 3Dプリンティングの教育に関して有名な例の1つは米ゼネラル・エレクトリックの取り組みだ。同社は初等・中等学校(8〜16歳)に対して3Dプリンタとカリキュラムのために200万ドルを拠出している。またSTEMおよびSTEAMプログラムに対する取り組みも行っている(STEMは科学、技術、工学、数学の頭文字をとったもので、STEAMはそれに芸術を加えたもの)。一方2年制カレッジおよび4年制大学に向けて、金属3Dプリンタの提供のために800万ドルを拠出している。

 オービタルATKが、地元の子どもたちを対象とした科学技術を体験できるイベントも行うのもSTEM関連活動の一環になる。「STEMのイベントは、技術キャリアを持とうとする若者の興味を刺激することが狙い。デスクトップ3Dプリンタは学生に基礎技術に触れされるのに適している」(フェルドミラー氏)。

科学技術の体験イベントで、スーパーマンは本当にあのスピードで空を飛べるかの検証展示。学区スケールで開催し、参加者は数千人規模になるとのこと。
シンポジウムと並行してハッカソンも行われた(出典:ダッソー・システムズ)

 オービタルATKなどがこのような教育機関との活動を行う背景には、将来の人材不足に対する危機感もある。企業が望むスキルと学生や求職者の持つスキルが一致しないスキルギャップが将来拡大することへの危機感もあるという。

受け身にならない、得られた成果は還元する

 「製造業は3Dプリンティング技術を促進するために、3Dプリンタメーカーや大学、ユーザーグループ、技術評議会、地元高校などを巻き込むべきだ。そして、十分な恩恵を受けるためには受け身ではいけない」とフェルドミラー氏はいう。「自社のアプリケーションにより合う材料を見つけ、品質とパフォーマンスをソフトウェアによって高めるよう取り組むこと、また装置のスループット向上と材料特性の強化に取り組んでいくことが必要だ。そして得られた成果はコミュニティーに還元してほしい」(フェルドミラー氏)。

取材協力:ダッソー・システムズ

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