アメリカの航空宇宙・防衛企業のオービタルATKは、3Dプリンティング技術の健全な発展のためには、単に装置を購入するだけではなく、3Dプリンタメーカーとの共同開発や、教育・研究機関、ベンチャーの支援など積極的に周囲を巻き込んで行動することが重要だという。
ダッソー・システムズは、2017年5月16〜18日に米イリノイ州で開催したSIMULIA、BIOVIA、GEOBIA統合ユーザーイベント「Science in the Age of Experience」に先立つ2017年5月15日に、「Additive Manufacturing Symposium」および「Additive Manufacturing Hackathon」を開催した。
ダッソーは今回、同社として初めてアディティブ・マニュファクチャリング(付加製造、AM※)、いわゆる3Dプリンティングの単独イベントを開催した。そのわけは、3Dプリンティング技術が設計および製造に与える影響や、製造業における経済的な効果を考慮してのことだ。
例えば材料コスト面では、従来の工法ではチタン製ブレードに最終製品の重量の15倍の材料が必要だったが、3Dプリンティング技術によって使用材料の重量をほぼ最終製品と同量に近づけることが可能になっている。また樹脂や金属における新材料も次々と登場している。積層方法に関しては、目的の材料を含んだ粉末を、レーザーによって固化させる方式が増えている。
シンポジウムでは、3Dプリンティング技術の先進的な活用を行う企業や、NASAなどの研究機関、大学などの教育機関からの発表が行われた。米オービタルATKは航空宇宙および防衛関連企業だ。航空宇宙業界は特に重量削減や製品寿命への要求が強いため、早期から積極的に3Dプリンティング技術の活用に取り組んできた。
オービタルATKの上級主席エンジニアであるジェリー・フェルドミラー氏は、同社の打ち上げ機部門においてAM(3Dプリンティング)担当を務める。29年間にわたり、打ち上げロケットの機構設計および解析、試験に携わってきた。またオービタルATKがFDM(熱溶解積層法)装置を導入して以来、3Dプリンティング技術の利用促進に取り組んできた。
同氏が取り組んだ3Dプリンティング用の材料は、打ち上げロケット「アンタレス」に搭載され、国際宇宙ステーションに補給船「シグナス」を送る初ミッションで打ち上げられた。
「3Dプリンティング技術で作った部品は製品全体で使用されている。またグラウンド支援で使用しているものもある。3Dプリンティング技術を採用している主な理由は、部品形状の複雑さに対応するためだ。また当社の製品は少量生産なので、設計変更にすぐ応えられる点でも非常にメリットが大きい。それらを考えると3Dプリンティングの加工方法がわれわれにとって最も合理的な選択になる」(フェルドミラー氏)。一方同社は新しい材料も積極的に模索している。搭載できる3Dプリンティングによる部品をさらに増やすため、強度重量比や衝撃波減衰、RF減衰などの材料特性の向上に取り組んでいる。
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