「SOLIDWORKS World 2017」の最終日、3D CADツール「SOLIDWORKS」の次期バージョン「SOLIDWORKS 2018」の新機能が発表された。「4つのエコシステム」に対応する新機能に加えて、次世代トップモデラー(トップモデルではない)を目指す4人がプレゼンするリアリティーショーのパロディー寸劇でも新機能が紹介された。
ダッソー・システムズ・ソリッドワークス(Dassault Systemes SOLIDWORKS:以下、ソリッドワークス)の年次ユーザーイベント「SOLIDWORKS World 2017」(会期:米国時間2017年2月5日〜2月8日、ロサンゼルスコンベンションセンター)の最終日の基調講演では、3D CADツール「SOLIDWORKS」の次期バージョン「SOLIDWORKS 2018」の新機能を発表した。これらの新機能は2017年3〜4月から一部ユーザーによるテストが始まり、2017年秋にリリースのSOLIDWORKS 2018に正式採用される予定だ。
ソリッドワークスブランド 製品ポートフォリオ管理部門シニアディレクター兼SOLIDWORKSブランドUXリーダーを務めるキショア・ボヤラクントラ(Kishore Boyalakuntla)氏は、講演の冒頭で、「SOLIDWORKSはベストインクラスの製品であるだけでなく、素晴らしいエコシステムも重要な役割を果たしている。今回は4つのエコシステムを紹介したい」と述べる。そして同氏は、「Design to Manufacturing(設計から製造)」「Data Management(データ管理)」「Simulation(シミュレーション)」「IoT(モノのインターネット)」という4つのエコシステムに対応する新機能を列挙した。
まず「Design to Manufacturing」に対応するのは、2月6日の基調講演においてソリッドワークスブランドCEOのジャン・パオロ・バッシ氏が、3D CADによる設計から製造をそのままつなげる「スマート製造」に向けた重要な機能とするCAMソフトウェア「SOLIDWORKS CAM」である。
SOLIDWORKSは、「スマート製造」に向けて、3D CADデータに製造情報を付加する「MBD」や、製造時の検査用文書を作成する「Inspection」、製造コストの計算に用いる「Costing」などを展開してきた。しかし、切削加工を行うのに必要なCAMソフトウェアは、別途購入する必要があった。
SOLIDWORKS CAMは、SOLIDWORKS対応のCAMソフトウェアである「CAMWorks」の技術をベースに、SOLIDWORKSの画面からそのまま切削加工を行えるようにするアドインである。2軸加工+手動でのターニングまでをサポートする。3軸以上の加工については、CAMWorksなどのCAMソフトウェアが必要になる。
次に「Data Management」に対応するのは、簡易PLMツールともいえる「SOLIDWORKS Manage」である。
SOLIDWORKSはこれまで、PDMツールの「SOLIDWORKS PDM」や、ダッソー・システムズのPLMツール「ENOVIA」との連携を可能にする「SOLIDWORKS Connector」などを展開してきた。SOLIDWORKS Manageは、バージョン管理やリリース管理にとどまっていたSOLIDWORKS PDMの管理機能を、プロジェクト管理、プロセス管理、アイテム管理、ダッシュボードやレポートといったよりPLM的な管理機能に拡張するものだ。
一般的にENOVIAのようなPLMツールは大企業が導入するものだが、中小企業でもそれらの機能を必要とすることもある。SOLIDWORKS Manageは、そういった中小企業向けに一から開発されたものだ。
そして「Simulation」では、ダッソー・システムズのCAEブランド「SIMULIA」の技術をSOLIDWORKSで利用できるようにした。新機能の「Simulation Engineer」は、ダッソー・システムのクラウド「3Dエクスペリエンスプラットフォーム」上で動作するSIMULIAのAbaqusソルバを用いた非線形の機構解析をSOLIDWORKSの画面で行える。
ローカルでの線形解析が可能な現行のCAE機能「SOLIDWORKS Simulation」から制約条件などを引き継いで、1クリックで非線形解析に移行できる。「今後はSIMULIAの技術の活用範囲を広げ、機構解析にとどまらないマルチフィジックス解析もできるようにしたい」(ボヤラクントラ氏)という。
最後に挙げた「IoT」では、SOLIDWORKSによる機構設計だけでなく、「SOLIDWORKS Electrical」による回路設計や、「SOLIDWORKS PCB」によるプリント基板設計を組み合わせて、IoTデバイスの設計を容易にしていく方向性を示した。
なお、IoTデバイスの通信接続や取得したデータの管理などについては、パートナーであるザイブリー(Xively)などのソリューションとより緊密に連携することで対応していく※)。ソリッドワークスとしては、あくまでIoTデバイスの“設計”に軸足を置くとしている。
※)関連記事:「SOLIDWORKS」と「xivley」でIoTデバイスの“バーチャルツイン”を作り出す
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