シミュレーションは分断から融合へ、データをリンクさせてコラボせよ――Science in the Age of Experience 2017SAoE 2017レポート(1/2 ページ)

ダッソー・システムズは初めてシミュレーション関連ブランド全てを統合したユーザーイベントを米国で開催した。狙いは異なる分野のアプリケーションを組み合わせる効果を知ってもらうことだという。イベント初日の講演と記者会見の様子を中心にお届けする。

» 2017年06月29日 10時00分 公開
[加藤まどみMONOist]

 ダッソー・システムズには2017年5月16〜18日(現地時間)、米イリノイ州シカゴにおいて、SIMULIA、BIOVIA、GEOVIAブランドを対象としたユーザーイベント「Science in the Age of Experience(SAoE) 2017」を開催した。また同イベントに先立つ5月15日には、「Additive Manufacturing Symposium」および「Additive Manufacturing Hackathon」も行われた。

 同イベントの前身はSIMULIAのユーザーイベント「SIMULIA User Conference」で、2016年からはSAoEに衣替えし、今回ははじめて3ブランド合同のイベントとなった(関連記事:CAEエキスパートが見て・感じた! CAEの最新技術動向&ユーザー事例)。

 SIMULIAは有限要素解析「Abaqus」をはじめとする各種の解析や自動化ツールを含む製造業向けブランド。BIOVIAは、生命科学や材料科学向けの化学構造・反応や分子モデリングおよびシミュレーションなどを行う製品群のブランド。GEOVIAは天然資源採掘や建設に関わるブランドで、地形や地質データを扱い、採掘計画や地質評価、工程管理などを行うツール群を持つ。

 3ブランド同時開催となったのは、異なる分野のアプリケーションを組み合わせて使ったときのメリットを知ってもらうためだという。「2017年のイベントでは、持続可能なイノベーションを生み出すにはバイオ、ライフをはじめ材料科学、地球科学など全てにシミュレーションが必要だという点にフォーカスした」(ダッソー・システムズ 社長兼CEOのベルナール・シャーレス氏)。

 またダッソー・システムズは全ての情報を集約、共有し、従来のアプリケーションを使えるようにするためのWebブラウザ型プラットフォーム「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」の強化、推進を進めており、これを利用するメリットやユーザー事例の紹介も行われた。

 イベントでは日本からの発表者を含む多数の発表が行われ、1200人以上のユーザー、パートナーが参加した。基調講演や個別アプリケーションのセッション、展示やポスターセッションなどが行われ、コアな情報交換だけでなく他分野の動向を知る場にもなっていた。ダッソーが同じく主催する3D CAD「SolidWorks」のユーザーイベント「SOLIDWORKS World」と比較すると研究的な側面が強いのも特徴の1つとなっている。

都市の丸ごとシミュレーションも可能になる

 同社のさまざまなシミュレーションを融合させようという方針を象徴する取り組みの1つが、シンガポールの都市全体をシミュレーションする「3DEXPERIENCity」である。シンガポール国立研究財団、シンガポール土地管理局、情報通信開発庁と共同で取り組むプロジェクトだ。

 「われわれはシンガポールの都市問題に真剣に取り組む。都市は人が作り上げた最も精緻なものだ。2050年には世界人口の3分の2が都市圏に住むといわれる。自然環境や人の動き、安全、ヘルスケアや交通、全てを3DEXPERIENCityに集約しようとしている」(シャーレス氏)。このプロジェクトではGEOVIAを中心に、SIMULIA、BIOVIAを含めて全てのブランドにまたがるシミュレーションを行うという。

シカゴのコンベンションセンター「マコーミックプレイス」で行われた全体セッションの様子
ダッソー・システムズ 社長兼CEOのベルナール・シャーレス氏

データ管理や知的財産権の対処がカギ

 初日の全体セッションでは、シカゴのビジュアライズ化プロジェクトを進行中のUI LABSや、垂直離着陸機の開発を進めるJoby Abiation、医療デザインを開発する名古屋市立大学などによる取り組みが発表された。

UI LABS CEOのキャラリン・ノウィンスキー・コリンズ氏。UI LABSはシカゴ地下のビジュアルマップを作成するプロジェクトを進行中だという。

 基調講演ではUI LABSのCEOであるキャラリン・ノウィンスキー・コリンズ氏が登壇。技術革命の歴史を振り返り、現在直面する課題について語った。製造業のデータ量は他分野と比較しても断トツの多さになる。工場やサプライチェーン丸ごとのシミュレーション、外科手術のシミュレーションも自動車の衝突や新薬のテストもバーチャルで可能になる。「データの管理や保護、知的財産権への対応がカギになるだろう」(コリンズ氏)。

 UI LABSでは本イベント開催地であるシカゴの地下のビジュアル地図作成プロジェクトに取り組んでいるという。シカゴは1871年の大火により一度都市が壊滅的な被害を受けており、その際に地下にインフラを構築したという歴史がある。何が地下にあるかは把握、まとめて管理されていない。これらの他、治水のため緑を活用するなどの計画も行っているという。

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