5GAAが技術的に推進しているのが、既存の携帯電話などの通信技術であるセルラー技術を使用するV2X「Cellular V2X(C-V2X)」だ。クライン氏は「C-V2Xには、技術的な面でも運用的な面でも一日の長がある」とC-V2Xの強みについて述べる。
さらに「C-V2Xは、技術的にも高いパフォーマンスを発揮できる範囲が広いという特徴がある他、既に携帯電話により関連する移動体通信技術のエコシステムが完成されており、それらで利用されてきた技術を使用することができる。最終的には自動車も携帯電話も含めたスケールメリットが発揮できるようになる」とクライン氏は語っている。
5GAAは、将来的には5GのV2Xへの活用を目指しているが、当面は4G LTEを活用したV2Xを推進していく方針。「既にコネクテッドカーは進み始めており、5Gを必ずしも待たなくても良いということは伝えたい。4Gでも実現できることも多い。すぐに検討を進めていくべきだ」とクライン氏は考えについて述べている。
4G LTE V2Xについては2017年3月の3GPPのリリース14の機能として標準化が完了しており、V2Xが実現できる準備が進みつつある。
ただ、5GAAがあえて5Gではなく4G LTEでも推進すべきと強調しているのには、理由がある。それは自動車業界の開発期間である。自動車業界では、自動車の開発には5年前後の時間をかけるのが一般的だ。新たな技術や部品などは今自動車メーカーに提案したとしても、市場に製品が出回るので最短でも3〜5年後ということになる。
V2Xは現在LTE V2Xが標準化されたばかりで2018年1〜3月くらいから車載システムの検証が開始される見込みだ。通信側での車載システムの検証が終わるのは2018年末頃になると見られている。ただ、そこから自動車メーカー側での検証が開始され、それにも2年くらいかかる見込み。最終的にはLTE V2Xでさえ、対応自動車が投入されるのは2020年末〜2021年頃になる。これが5Gということになれば、通信側も自動車側もさらに時間が必要になると見られ、商用化までは10年単位の時間が必要となる。
V2Xについては、セルラー技術を採用したものだけではなく、DSRCを採用しV2Vから発展してきた技術なども存在する。5Gにこだわり過ぎると、C-V2X技術そのものが別の技術に取って代わられる可能性がある。こうした状況を回避するためにまずは4G LTEでC-V2Xを普及させ、それを5Gに進化させるという形を狙っているのだ。
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