シーメンスが、デジタルエンタープライズの価値の1つとして訴えているのが「デジタルツイン」だ。「デジタルツイン」とは、IoT(モノのインターネット)などで取得したデータにより、フィジカルの世界で製品に起こっている情報を全て、デジタルの世界にコピーし、デジタルの世界に“現実世界の双子”を作ることである。これにより、各種データがフィジカルの世界でどういう動きやどういう影響を与えているのかということを、デジタルの世界で再現することができるようになる。さらにこのデジタル上の“モノ”に対しシミュレーションを活用することで、現実世界を変化させるとどういう影響が起こるかというのを、現実世界を変化させずに予測することが可能となる。
シーメンスではさらにこのデジタルエンタープライズの一環として、3つのデジタルツインを活用していく方針を示す。「デジタルツインにおいて、シミュレーションを効果的に活用することで、設計、生産、プロセス最適化において効果を発揮できる」とヘルムリッヒ氏は述べる。
具体的には、製品の企画段階でユーザーのニーズや新たな活用シーンなどを仮想空間で描く「デジタルプロダクトツイン」、生産段階において生産を行う設備情報や組み立てられる製品情報を仮想空間で描く「デジタルプロダクションツイン」、製品が実際にどういう使われ方をしているのかを把握する「デジタルパフォーマンスツイン」などを提案する。
こうしたデジタルツインの価値を実現するのに必要になるのが、シミュレーション技術である。シーメンスでは、シミュレーションにおけるポートフォリオ拡充のためにM&Aを進めており、2016年には新たに米国の電子系設計ツールのベンダーであるメンター・グラフィックスの買収などを発表している。さらにプロセス産業向けのシミュレーションのポートフォリオなども拡充している。
シーメンスでは、デジタル化による新たな生産プロセスの活用として、同社の生産プロセスシミュレーターである「Tecnomatix」、エンジニアリングツールである「TIAポータル」、PLC「SIMATIC」を組み合わせて、仮想空間上でシミュレーションしたシステムやプログラムをそのまま工場で再現できる仕組みを提案。さらに、製品のパーソナライズ化を進めるために、積層造形(アディティブマニュファクチャリング)技術との連携強化を進める方針を示した。
さらに、3Dプリンタなどの積層造形技術を活用した部品製造のオンラインコラボレーションプラットフォーム構想「Siemens Part Manufacturing Platform」を発表した。これは、製造リソースの最大活用や、積層造形の専門知識の入手、ビジネス・チャンスの拡大などを目的に製造コミュニティーをつなげる環境を提供するものだ。同基盤はシーメンスPLMソフトウェアが開発する。
例えば、部品のバイヤーとマイクロファクトリーがつながることで、世界中の都合の良い場所で部品を積層造形技術を使ってオンデマンド生産するという姿を目指す。さらにこの情報基盤にコラボレーションツールなどを実装することで、オープンイノベーションなど、新たな技術開発や製品開発などに貢献することを描いている。実際に同基盤をリリースするのは2018年半ばを計画しているという。
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