設備単位での電力見える化が求められる一方で、課題となっていたのは既存設備への計測機器の施工負担だ。その課題に対して、三菱電機が着目したのはもともとブレーカに付いている端子カバーだった。同社の端子カバー形計測器の開発の舞台裏に迫った。
カーボンニュートラルへの機運の高まりを背景に、製造現場などで消費電力の見える化が求められている。一方で、既存設備における消費電力の計測は、工事の手間やコストが課題となっていた。
そうした課題に対して、三菱電機が2025年9月に発売したのが、取り付けや計測が容易な「端子カバー形計測器〈One touch MDU〉」(以下、端子カバー形計測器)だ。
端子カバー形計測器という、これまでにない製品をどのように実現したのか、開発を担った三菱電機 福山製作所 配制システム第二部 計測技術第二課 課長の松枝真一氏、同社 福山製作所 配制システム第二部 計測技術第二課 計測機器開発チーム チームリーダーの瀧川雄介氏に話を聞いた。
MONOist 端子カバー形計測器の開発背景について教えてください。
瀧川氏 三菱電機では従来、電路情報を計測/表示/伝送するMDU(Measuring Display Unit)計測表示ユニットと遮断器を一体化した、MDUブレーカを販売していた。
電圧や電流、漏えい電流を検知するセンサーをブレーカに内蔵しており、省施工、省スペースを特徴としている。計測データは有線で外部に転送できる他、ブレーカに大きな電流が流れ、電流を遮断した場合、その時の電流値や遮断した原因を記憶できる。
ただ、これまでMDUブレーカがカバーしていた領域は、いわゆる工場の建屋に外部から電力が流れてくる際の最初の「盤」の中だった。工場全体の消費電力の計測はできたが、昨今はもっと細かく、工場の中の設備単位で電力をチェックしたいというニーズが出てきた。
そうすると扱う電流が小さくなることで、盤も小さくなる。また、新規の設備ではなく、既存の設備の電力を測りたいというニーズがあり、後付けできるようにする必要があった。
松枝氏 通常、計測機器を盤の中に後付けする際には、機器を取り付けるだけでなく、センサーの配線などもしないといけない。設備を動かすような盤となると、盤のサイズも小さくなるため、それらの工事を行うのはとても手間がかかる。
より小型のMDUブレーカの開発も検討したが、取り付ける盤の中のスペースに制限がある中で、精度の良い小型のセンサーがなかなか見つからないという課題があった。
そこで、感電を防止するためにブレーカにもともと付いている端子カバーを置き換えることで後付けできるようにすれば課題を解決できるのでは、という発想で端子カバー形計測器の開発に至った。
MONOist 端子カバー形計測器の特徴を教えてください。
瀧川氏 三菱電機のブレーカに付いている端子カバーと同じサイズ、形状になっているため余分なスペースを取らず、ワンタッチで取り付けられるので施工性も優れている。
端子カバーの中に計測器が内蔵されており、センサーの配線も要らない。表示ユニットには無線通信でデータを送信するため、データを送信するための配線も必要ないという配線レスになっている。無線通信は2.4GHz帯を使用し、最大通信距離は約3m、通信周期は1秒だ。最大8台まで表示ユニットに接続できる。
製品としては、横幅75mm、同90mmの2種類がある。端子カバー形計測器用パネル表示ユニットは、CC-Link通信対応とMODBUS RTU通信対応の2種類がある。
計測できるのは電力量のみで、計測精度は電線の呼び断面積によって異なる。
表示ユニットから通信線で上位のシーケンサにデータを送る際に、通常はシーケンサでデータを収集するためのラダープログラムを書く必要があるが、今回、われわれの方でエネルギーデータ収集パッケージを用意している。無償の設定ツールによって、ユーザー側でラダープログラムを書かなくても簡単にデータ収集が開始できるようになっている。
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