工場内のデジタル化を進める上で、制御コントローラーとセンサー/アクチュエータの間はアナログ通信のままだった。そのデジタル化を可能にする「IO-Link」の国内普及を目指す「IO-Linkコミュニティ ジャパン」が設立された。オムロンなどの幹事会社6社とメンバー14社の20社が参加する。
産業用デジタル通信技術であるIO-Linkの日本国内での普及を目指す「IO-Linkコミュニティ ジャパン」の設立会見が2017年4月26日、東京都内で開催された。幹事会社はオムロン、ケーメックス、シーメンス、ターク・ジャパン、バルーフ、ビー・アンド・プラスの6社で、これらの他14社がメンバーとして加わり、20社が参加して発足する。リーダーは、日本プロフィバス協会 会長の元吉伸一氏が務める。
設立に併せて、早稲田大学 理工学研究所 産業用オープンネットワーク・ラボラトリー(IONL)の協力を得て、同研究所がある早稲田大学喜久井町キャンパスで「IO-Link体験コース」が定期開催されることも明らかにされた。
リーダーを務める元吉氏は「インダストリー4.0などで工場のデジタル化が話題になっているが、実際にはフィールドネットワークまでで、末端にあるセンサーやアクチュエータにデジタル通信機能を付加する取り組みは進んでいない。IO-Linkはその状況を打ち破るものだ」と語る。
FAで用いられるセンサーやアクチュエータとPLCなどの制御コントローラーとの間ではアナログ信号で通信しており、デジタル信号への変換は制御コントローラーで行われているのが現状だ。センサーやアクチュエータ自体にデジタル信号を扱える通信機能を付加してこなかった理由は明白である。一般的にFA用のセンサーやアクチュエータは5000〜2万円と比較的安価だが、通信機能を付加すると価格は2倍以上に跳ね上がってしまうからだ。
IO-Linkは、この価格上昇を50%以下に抑えられる点が特徴になる。そして「この価格上昇よりも得られるメリットが大きいからこそ採用が拡大している」(元吉氏)という。実際に、IO-Link機器の累積出荷台数は、2014年末で219万台、2015年末で360万台、2016年末で530万台となっている。2016年の出荷台数は前年比20%増の170万台で、2017年もさらに伸びる見込みだ。
採用拡大のきっかけになったのはドイツ自動車業界からの「生産スケジュールに影響を与えるようなトラブルを出したくない」という要望である。IO-Linkを使えば、現場機器自身から正確なデジタル情報で発信させられるので、生産ラインの故障箇所をすぐに特定し、即座に復旧できる。元吉氏は「このメリットを得られるなら、多少高くてもIO-Linkを使う。それがドイツの自動車業界の考え方だった」と説明する。
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