トヨタ自動車は、米国の生産会社Toyota Motor Manufacturing, Kentuckyに13億3000万米ドル(約1476億円)を投資する。トヨタ自動車のもっといいクルマづくり「TNGA」(Toyota New Global Architecture)を採用した「カムリ」の新モデルの生産に向けて、工場を刷新する。
トヨタ自動車は2017年4月10日、米国の生産会社Toyota Motor Manufacturing, Kentucky(以下、ケンタッキー工場)に13億3000万米ドル(約1476億円)を投資すると発表した。トヨタ自動車のもっといいクルマづくり「TNGA」(Toyota New Global Architecture)を採用した「カムリ」の新モデルの生産に向けて、工場を刷新する。
同社は2017年1月の北米国際自動車ショーで、今後5年間で米国に100億米ドル(約1兆1100億円)を投資することを発表しており、今回の投資はその一環として行われる。既に、中型SUV「ハイランダー」を生産するインディアナ工場に6億米ドル(約666億円)を投じることも公表している。
今回の発表について、米国大統領のドナルド・トランプ氏は「製造業が現政権下において、経済環境の大幅な向上に自信を持っていることをあらためて示すものだ。全米製造業者協会の2017年展望調査では、楽観的な見通しを示した回答の割合は数カ月前と比較して37%増加しており、現在では93%を占める」と、米国内の製造業が前向きな姿勢であることを強調した。また、今回の投資額は、自動車メーカーがケンタッキー州に投資する額としては過去最大だとしている。
トヨタ自動車は13億3000万米ドルの投資によって、TNGAを採用したカムリの生産に向けて工場を刷新するだけでなく、設備更新や新しい塗装工程の導入など生産工程の最新鋭化・効率化を図る。また、カムリ生産のために700人以上を追加雇用したことにより、ケンタッキー工場の従業員数は過去最多の8200人となった。2013年にはケンタッキー工場にレクサスブランドの生産で5億3000万米ドル(約588億3000万円)を投資しており、投資額は直近4年間で18億6000万米ドル(約2064億6000万円)に上る。
TNGAとは、部品の共用化やモジュール設計により、原価を低減して“もっといいクルマづくり”に再投資するサイクルを構築することを目指す取り組みのことだ。ハイブリッド車「プリウス」の現行モデルには、低重心化を図って運動性能や乗り心地を向上させるプラットフォームが採用された。プラグインハイブリッド車「プリウスPHV」や小型SUV「CH-R」も同じTNGAプラットフォームだ。
TNGAの対象となる部品はプラットフォームにとどまらず、ガソリンエンジンやハイブリッドシステム、トランスミッションも含まれる。レクサスブランドのフラッグシップクーペ「LC」には、TNGAに基づいて刷新した10速ATやFR向けハイブリッドシステムが搭載されている。
ケンタッキー工場で生産する新型カムリは過去15年連続で米国の乗用車セグメントで販売トップとなった最量販車種だ(米国では、ピックアップトラックやSUVはライトトラックセグメントになる)。プラットフォーム、ガソリンエンジンモデルに搭載する排気量2.5l(リットル)の直列4気筒ガソリンエンジンと8速AT、ハイブリッドモデルに搭載する同2.5lのガソリンエンジンとハイブリッドシステムがTNGA採用の部品となる。
工場の既存の生産ラインは、大量生産を前提とした粗形材加工や、専用設備が多用された機械加工や組み立て工程などで構成されている。既存の生産ラインのままではリードタイムの短縮が難しく、設計を効率化するTNGAの狙いが生かされにくい。そのため、TNGA採用モデルの生産に当たっては、各種部品のリードタイムを短縮できる生産ラインに刷新されている。
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